ヘッドレスが流行ってる?のは当店だけ?? HOHNER G2T ストランドバーグ…のコピー商品編
2021-05-01
いよいよGW突入ですね。去年と同じくつまんねぇGWですが…先に申し上げておきます。今回のブログは長いです。
GWの暇つぶしにでもお読み頂ければ幸いです。
去年の秋頃から何故かヘッドレス系の作業依頼が増えております。
ヘッドレスのメリットと言えば一番は持ち運びに便利なコンパクトさでしょうか。
この状況下で持ち運びのメリットが活かされるのかは謎なのですが…
数人にお聞きしたところでは自粛ストレス⇒ネットショッピングで今までとは違う
ジャンルのギターをポチッてしまったとか。←それなら理解出来ますね!
そんな中で比較的最近作業した2本をご紹介。
まずはHOHNER G2T。
懐かしいです!自身も過去に所有した事が有ったので。

ご依頼頂いたのはジャンボフレット(JESCAR #57110)への交換、トレモロの完全固定です。
まずは指板修正。

今回の様にナット代わりの0フレットが有る場合、0Fは1F以降より一回り太い=山が高い
フレットを打ちます。(モズライト、オールドのグレッチ等の同サイズフレットがお約束の場合は除く)
0FにはJESCAR#58118を打ちました。

フレット周りの作業完了。

0Fが少し太くて高いのがお分かり頂けますでしょうか?

さて、ここからが難題です。
トレモロの動作不安定のためトレモロの完全固定。
自分も所有していたのでよく分かるのですがトレモロがそれほど硬い金属で出来てはいないので
使用による摩耗や経年劣化で色んな所にガタが出て来ます。
まずはトレモロスプリングを締め付けるテンション調整ビス。
ビス自体も摩耗でネジ山が削れ、本体側の受けネジもかなりネジ山が崩れています。
ビスはステンレス製のM4で近い長さの物をグラインダーで削って交換、
本体受側はとりあえずM4のタップでネジ山を整えてはみましたが…

やはりスプリングテンションに負けてテンションビスがきっちり止まりせん。
滑って抜けてきてしまいます。

なので奥の手です。

スピードナットを挟み込んで受けネジの補強!
これでテンションビスもきっちり機能する様になりました。

次にトレモロ完全固定ですが…
当初は元から付いているトレモロのロック機構を何とか補強してみるつもりでしたが
やはり摩耗と劣化できっちり機能しません。

で、よくやるパターン、ありがちアイデアでアルミの角材を挟み込んでみるも…

アームアップ方向への動きは止められますがアームダウン方向にはスプリングテンション不足で
固定が効きません。
画像はありませんがトレモロ本体側のスプリング受け部にクラックが入っているのでスプリングの
テンションを上げるわけにはいきません。

しばし新たな解決策を考えましたが
やはり物理的に強制固定するしか無いと結論。
トレモロ裏面のビスを利用してL字のABS樹脂を固定。

何故ABS樹脂を使うかと言えばトレモロ面=ボディー表面と後側面が直角ではない
ので固定具をある程度その角度に馴染ませる必要があるので。
本当は金属のL字アングルが確実でしょうけど角度が微調整出来て強度も確保出来る
のはABSしか思いつきませんでした。

ガッツリ固定完了!
まぁ見た目は少しアレですけどチューニングキープの機能性重視で。

こうして最大の難点はクリアーしましたが他にも気になるところが。
これはホーナーだけではなく本家スタインバーガーの古い物でもたまに見られる症状ですが
ダブルボールエンドではなく通常弦を使用可能にするストリングアダプターの固定ピン折れ。
今回は片側が折れていたので元ピン位置にボール盤で穴を開けて真鍮棒を埋め込みました。

受け側のピン穴も整えて完了。

このG2T、電気系は以前作業させて頂いたのでこれにてコンプリートです。

さて、お次は難題山積みスペシャル(笑)です。
ストランドバーグ、の 中華製コピーモデル。
日本国内ではあまり見掛けませんが海外通販サイトではメジャーみたいですね。
今回のお客様も海外通販で購入されたそうです。
聞くところによればDIY組み立て用のキットでも販売されているそうで。
作業コンセプトは「とりあえず普通に弾けるように」。
購入されてから「ダメだ…こりゃ…」状態でほぼ使用していない状態でお預かり。

このブリッジに驚き、そして悩まされる…詳細は後ほど。

サドルのイモネジで各弦の弦高調整可能。
そしてサドルの回転による弦乗り位置のズレも防止する構造。
中々理にかなった構造だと思う。

ストランドバーグ同様にかなり細いインチサイズのレンチが付属。
が、レンチも弦高調整イモネジも精度はイマイチだ(笑)

6弦のイモネジ1個に至ってはレンチ穴さえちゃんと空いていない…
他にも1個レンチ穴が崩れてきっちりレンチが入らない物も有る。

続いてトレモロスプリングキャビティー。
落とし込みのザグリが雑。
そして右下のネジ穴は土台が無いのでネジが効いていない状態。

ヘッド先の弦ロック機構。基本的にはストランドバーグと同じシステム。

ストランドバーグはステンレスの薄い板だったがこちらは厚みのあるアルミ製。
弦とロックスクリューとの関係も異なる。←後述。

まずはネックから着工。
フレット浮き多数。音詰まりアリ。
そして12F上で2ミリ以上の鬼高弦高も何とかしなければ。

フレットタング横のスロットが埋め切れていない。

フレットの側面も浮きが有り、エッジが立っているので手当たりが痛い。

そして意味不明の打コン(笑)

けちょんけちょんに書いてはいますが何とか使える様に出来る限り作業します!
まずはフレット下の問題点を全て樹脂で埋めてからすり合わせ作業。

すり合わせ作業の途中でエッジは1本1本丸めます。

かなり大変でしたが(いっそ打ち換えた方がラク?)何とかフレット周りの作業完了。

続いて電気系。
クロスワイヤー使ったりと中々に気遣っている様に見えてアース線は剥き出し。

タップ線の絶縁はまさかのビニールテープ!
ま、いいや。後で作業しよ…と、思いつつ

先にトレモロパネルのビス穴に取り掛かる。

とりあえず埋め木。

新たな壁になる丸棒を貼り付けて整形、ビス穴を開ける。

と、なると全て斜めに空いている他のビス穴も気になってくる。
気付けば全て埋め木していた…

パネルに合わせて正確なビス穴の位置出し。

ここまでしてると同じくビスが斜めに入っているコントロール部も許せなくなってくる。

どーせ電気系もやり直すんだろ?
えーい全部外してしまえ!と真っ裸にする。(当初ここまでやるつもりは無かった)

唯一の救いはジャックの配線が手で引っ張っただけでポロッと外れた事だろうか…
(何の救いでもない)
と言うかこのダイレクトマウントジャック、どうやって止まってんの??

接着されてました!(驚)
ジャック壊れたらどうしよう…

せっかくのクロスワイヤーですが…

ハンダ付けが「天ぷら」になっているのでやり直し。
どうやら芯線が素材的に脆い様で簡単に折れ切れしたので線材も変えちゃいます。

電気周り完了。
ジャックへのハンダ付けは
「あー…歯医者さんってこんな角度で作業してたよね…」みたいなアクロバティックな
ハンダ付けでした。

トーンのコンデンサーがアクティブ用の104なのはここだけの話し。
(ちゃんとお客様にご報告しました)
ポットは500kΩだったのはぎりぎりセーフか?←いや、アウトだろ…

ピックアップの足が曲がっていたのもここだけの話し。
(ちゃんと直してから付けました)

12F上で2ミリの鬼弦高を解決すべくネックジョイントにシムを挟み込んで
ネック角を変更します。

さて、ようやく弦が張れるところまできましたがココでストランドバーグと大きな違いが。
本家ストランドバーグはブロックをネックに固定しているビスの頭が弦で押し潰されない様に
円盤が入り、つまりネック側からではビスー円盤ー弦ーロックスクリューの順でしたが
これはビスー弦ー円盤ーロックスクリューの順の様です。
円盤にロックスクリューが当たった跡がありますので。
と、言うかブロック自体がその順で無ければ弦が通せない寸法になっております(笑)

ようやく弦高のセッティングが完了。
六角穴が空いてなくて調整出来ないイモネジやレンチ穴の形状不良で同じく調整出来ない
イモネジはサドル高がブリッジにベタ付けで構わない1弦へ移植。
汎用サイズのイモネジが適合するなら本音は全部交換したいのだが。

弦高が決まったところでサドルのイモネジを軽く固定する。

もちろん直塗りではなく3弦の切れ端を使って慎重に少しだけ。

で、ようやくこのブリッジの凄いところを紹介出来る!
お預かりして最初にチューニングキーを回した時に「軽っ!」と驚いた。
これまで触った事のある全てのヘッドレスギターのチューニングキーの中で間違いなく一番軽い!
何でだろ?とは思っていたがこの段階で分解して感心した。

よく見るチューニングキー根元にはナイロン、テフロン系ワッシャーが数枚
挟まれているだけだが何とベアリング付きワッシャーが挟まれていた!!
スゲェよ。他のメーカーも真似しようよ。

いよいよ本格的なセットアップに入る。
何故か09-42のゲージ、レギュラーチューニング、新品のGOTOHトレモロスプリング、
しかもハの字掛けでスプリングハンガーが壁面に当たるぐらい締め付ける必要がある。

仕方ないのでパワースプリングを発注。

パワースプリングだと普通の位置に収まった。

トレモロパネルに空いた不要な弦通しスリットごときではもはや驚かない。

コレはオーナー様へのアドバイス的に書きます。
弦交換の際、弦を抜いたら円盤プレートが非常に取りにくい。
なので2.5ミリの六角レンチに両面テープをクリクリ貼って引っ付けて円盤を取り出す。
両面テープを巻いてで丁度良いサイズが2.5ミリだった。

ところが弦をロックする六角レンチも2.5ミリなので思わず「あっ…」って声が出た(笑)

ようやく完成!
驚きの連続なギターだった。
極めつけは3弦サドルが一番後端でもオクターブが合わない。
でも今更驚くだけのメンタルは残っていなかった。

でもベアリングリングの入った構造、他の部分の精度は色々難アリなのにアーミング時
スムーズに動くスタッドとブリッジの兼ね合い精度が異常に高い事。
そして弦を通してから締め付ける弦ロックとサドル内から弦通しスリーブ抜け防止の
2役をこなすイモネジ、本当にアイデアは素晴らしいと思う。
この構造でそれなりの精度を出すメーカーが製造したら最強のヘッドレス用ブリッジだろう。

いいですか、皆さん。
GWヒマなのは分かります。
何気にネット見ててポチリたくなるのも分かります。
マルチスケールに本家ほどの金額を投資するリスクを悩むのも分かります。
でもこの類いをポチるならそれ相当の覚悟が必要です(笑)
値段相応と割り切れる寛容な心を持ってポチりましょう。
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