FloydRose トレモロのスタッド倒れ修理 もぅ倒れたくても倒れられないスタッドアンカー編 Ver.2!!

 2016-11-08
いやぁ~もぅ11月ですか。
早いねぇ1年って。
何かひたすらフレット交換してるうちに1年が経ってしまっているような気がする…
今年は作業に時間の掛かるリペアが多かったものの作業方法を悩む程の
重症患者はあまり無かったかな?
このままフレット打ちまくっているうちに今年も終わるのか?(現在も秋のフレット交換祭り真っ只中!)
…なんて早くも1年を振り返ろうとしていたある日、
神様は見ていたのでしょうな。そんな油断していた?オレを…
突然難題は訪れたのでした…



さて、今回は現代ソロイストの代名詞とも言えるギター、トムアンダーソンのドロップトップです。
皆さんご存知の通り決して安くはないギターです。
(画像は完成時)

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お預かり時↓
リペア内容は「スタッド倒れ」。
数年前に「Ibanez Low-Pro-Edge トレモロのスタッド倒れ修理編」をブログアップしてから
ワンオフでアルミプレートを削り出すので安くはないリペアですが同様のリペアを沢山作業させて頂きました。
今回も上記ブログをご覧頂いてのご来店だったのですが…

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早速分解してみる。
1弦側のアンカー部が完全に逝ってしまっております。

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なななな何と!
アンカー前面の木部が貫通して取れてしまっています!!
このトムアンダーソン、メイプルトップのバスウッドバックですが1弦アンカー周辺のバスウッドが
他の部分に比べて極端に柔らかい=強度が無かったのでしょう。
長年ギターリペアに携わってますがトンネル状に木部が貫通したスタッド倒れは初見です。
まぁ当然トップのメイプルも割れてますが。
2003年製なのでまだ木材の枯渇云々が騒ぎになる前ですね。
たまたまバスウッド運が悪かったとしか言い様が無いかも…

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ピッチシフトキャビティーの深さが丁度トップのメイプル貼り合せの深さだったのか
スタッドが倒れてネック側へズレたフロイド本体がメイプルを押し出して完全に剥がれてしまっています。
これは困った…

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何故なら従来のアルミプレートを使ったリペアだとプレート自体は当然ビス止めしますが
それでも仮にネック側へ倒れようとしてもリアPUとの間のボディーが支えてくれてプレート&スタッドの
前傾を完全に抑えていましたので。
今回はプレート前面に一切壁が無い状況なのです…
仮に完全に剥がれているメイプルを横から接着剤流して無理に接着しても強度的には全く役に立たない
でしょう。

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途方に暮れながらとりあえず6弦側のアンカーを抜く。
6弦側はバスウッドがしっかりしているのかウソみたいにしっかり埋め込まれていて
抜くのがかなり大変でした。

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グラグラしているメイプルはもはや邪魔なだけなので「ペリッ」とカットして
まずは1弦側のアンカー穴の補修に入ります。
白い付着物はお客様がDIYで何とかすべく流し込んだパテの跡。
※この様な事態になれば誰しもが焦るのは分かりますがパテや接着剤を使う前にご相談下さい。
パテや接着剤を使ってしまうと木目が埋まるので本来使うべき接着剤等が染み込まなくなります。
したがって強度を保証出来るリペアが難しくなりますので。

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楕円になってしまったアンカー穴を僅かに大き目のサイズのビットで拡大=成形してから埋め木。

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問題はこの前面だ…

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思い切って埋め木し易い形状にルーターで成形してから用意したのはトラ杢の入った
硬いメイプルの端材。

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適当な大きさのブロックにカットしてからまたもやパズル作業である。
ちまちま手作業で削りながら傷口に合う様に成形していくのである。
文章で書くのは一瞬だがかなりの時間が掛かる作業なのだ。
今年は例年になくパズル作業が多かった…
それにしてもアンカー前面の成形時にこのバスウッドの柔らかさに改めて驚いた。
ルーターで掘ってからノミで細部修正するのだが刃物がサックサック入る。
普段は苦労する直角出しも一撃で済んだ。
やはりこの1弦アンカー周辺のバスウッドは強度は全く期待出来ない。
なので今回は従来のアルミプレートを使ったリペア方法を進化させます!

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そろそろ目が疲れて(そろそろ老眼ヤヴァイか?)
腰が痛くなってきた頃にきっちり収まる埋め木が完成。

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そして接着。
パテの染み込んだ木部は完全に削って無くしたのでバッチリ接着出来ました。

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埋め木の接着剤が完全に硬化してから一気にルーターで成形。
接着剤が硬化するまでの時間に今後の作業段取りを煮詰め、ルーター用の冶具を製作していました。

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アンカー穴、アンカー前面の埋め木も良い感じで密着しています。

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中央部にあった生産時の冶具穴も少しでも強度を上げたい思いから埋め木しました。
ルーター加工部の角は丸くなるので刃物でスクエア形状に成形。

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さて、今回は従来のアルミプレートではなく「コの字型」アルミチャンネルを使います!
計画に合うサイズの素材が中々見付からず、建築資材屋さんに相談したら
オーダーは可能だが超大量&超高額なら受注出来るとの事(笑)
仕方ないのでネットで一番希望に近いサイズの物を取り寄せた。
肉厚の薄い物や小さいサイズの物は近所のホームセンターにいくらでも有るのにねぇ…

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埋め木はしっかり出来ていますが元々のバスウッドの強度が信用出来ない。
コの字型のアルミ部材で覆う事によってブリッジの負荷の掛かる箇所全体の強度UPが狙いです。
万が一アンカーが埋め木したメイプルをネック側へ押し出そうとしてもこれなら心配無用!

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 厚さ2ミリのコの字型アルミの強度はバツグンです!
ひょっとしたら象が踏んでも大丈夫?とも思える程の硬さです。
この硬さが安心出来る強度をもたらし、この先地獄とも思える手加工の難しさをもたらすのです…

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ルーターでカットしたボディー幅に合わせるのも一苦労…
深さに合わせて削り出すのはもっと大変…
何せ各部の直角を崩さずにコンマ何ミリでサイズを合わせていくので。
ほぼ丸一日、朝から晩までちまちまアルミを手作業で削っておりました。。。
その日帰宅したら靴下の中にまでアルミの粉が入り込んでた(笑)

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さて、アルミの成形が一段落したら今度はアンカー穴の位置出し用の冶具を作ります。
アルミは透明では無いのでアンカー位置が見えないからね。
アクリルプレートで製作。

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1弦側のアンカー穴も空け直して、

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「実際のアルミはこうなりますよ~」な冶具が完成!

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仮止めしてみる。

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で、冶具に合わせてアルミを加工。

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合体!!
ちなみに合体前にルーティングで木部が剥き出しになった箇所はタッチアップで着色、
PUザグリは導電塗料を塗り直しておきました。
木部剥き出しだと湿度や乾燥の影響が考えられるのとなるべく良い仕上がりにしたかったので。
まぁ組み込んだらほとんど見えない&気にならない場所なんですけどね。

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アンカーの埋め込みもバッチリ!
厚みが2ミリのアルミなのでアンカーはアルミと面一でも倒れ対策としては十分でしょうが
保険の意味合いでアンカー上面が0.5ミリ突き出す様にしています。
これでしっかりアルミにアンカーの荷重が掛かります。
要は元のトップ面からアルミ厚2ミリ+保険0.5ミリ=2.5ミリ掘り下げたって事です。
それだけ冒頭のトンネル状に抜けた木部が尾を引いたって事です(笑)

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ブリッジ側はこんな感じ。
当たり前ですがブリッジ側、リアPU側共にクリアランスは計算しています。

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ボディー裏側、トレモロスプリングキャビティーからはこんな感じ。
サスティーンブロック側の壁面からアルミは1ミリ飛び出しますが上面までは余白があります。

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なのでアームをフルアップ時にもサスティーンブロックとアルミは接触しません。
要はアームアップの幅は作業前と同じです。
もちろんネック側のアルミもリアPUには干渉しません。

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リアPU側から。
ここまで出来た時には達成感と共にどっと疲れが出てきました…

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組み込み終了!
当たり前っちゃぁ当たり前なのですが激しくアーミングしても全く問題ありません。

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真上から見ればアルミが見えるのは仕方ないですな。

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いやぁ~苦労しました。そして久し振りに頭使いました(笑)
最初にお預かりしてからしばらくは他の仕事中も飯食ってる時も風呂入ってる時も車の運転中でさえ
今回どう作業するのかばかり考えてました。
考え抜いた末に見た目よりもサウンドよりも強度を最優先するならこの作業しかないかなと。
結果的には良い着地点へ到達出来たかと思います。
今後Ver.3を発案しなければならない様なリペアが来ない事を切に願います…

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トムアンダーソンってやっぱりカッチョイィですな!

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さ、フレット交換祭りに戻ろ…


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