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タブーだらけの内容でサスティナーを組み上げる。EDWARDS版ホライズン編

 2020-10-03
久し振りにサスティナーの作業ネタでブログアップです。

これまで当店ではサスティナー基板からスイッチ類を外して移設したり、ドライバー直下にパッシブピックアップを
配置したりとフェルナンデス社ではタブーとされている内容での作業実例を当ブログで紹介してきました。
それをご覧頂いたお客様やショップ様が「あぁこんな事も出来るんだ」とお考えになったのか
実際に作業し、トラブルが発生したところでご相談頂く事も多い。
なので今回は「こんな事も出来ますよ」ではなく「こんなに大変なんですよ」的に書いてみようかと。
ただしこれまでのブログ同様、具体的な基板改造箇所、内容等は伏せさせて頂きます。


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お預り時の状態。エドワーズ版、スルーネックのホライズンタイプ。
お客様がDIY作業を施して頓挫してしまった状態です。
ご希望としては元のコントロールレイアウトを活かし、新たなスイッチ類を追加せずにサスティナーを
搭載したいとの事。
画像には写っていませんがサスティナー基板からは既にスイッチ類が取り外され、
フロント用の昇圧トランスも破損してしまったとの事。

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フロントにはフルモード用ドライバーではなく、サスティナーライト用のハムバッカータイプが
載せられています。
リアはダンカンTB4かな。

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裏面はこんな感じ。

※ギター雑誌やネットでギター改造の際、キズ防止のマスキング施工を一般的なマスキングテープを
貼りまくっている画像を見ますが基本的にお勧め出来ません。
ラッカーやツヤ消しですと確実にテープ跡が残ります。

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まずは全バラシ。
マスキングテープ跡は非常に浅かったのでバフ掛け+ワックスで消す事が出来ました。

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一般ユーザーがここまでザグリを掘るのは大変だったろうなぁ…
後ほどお聞きしたのですがザグリ箇所にはニスを塗られたそうです。

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まず自分が悩んだのはこの基板収納ザグリとトレモロザグリの近接状態。
これではコントロールパネルの落とし込み部=パネル設置部の確保がかなり難しい。
個人的に変なプライドでココは絶対に貫通させたくない!と心に誓う(笑)
自分が一から作業する場合、おおよその基板ザグリの位置を決めてから蓋=パネルの
位置、形状から着工します。基板ザグリの位置関係はパネル内に収まれば良いわけで。
その面で今回は逆行する難しさも追加と言える。

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新規にコントロールパネルを制作するにもポット類が収まるネック側は基本的に新たな加工は必要無いので
純正パネルをお預かりし、前部はそのパネルを元にして新規のパネル形状を検討します。

が、

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純正パネルの落とし込み量(深さ)がかなり深く、見た目で気になるレベルだったので…

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悩みましたがワンオフのオリジナル形状を制作する事にしました。
まずはちょっとでもラク?する為に既存のザグリ・パネル冶具をあてがってみる。
やはり範囲、形状共に参考に出来そうな物は無い。
いつも通り神様はラクさせてはくれないらしい(笑)

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意を決してパネル形状デザインに入る。
ボディーにはエアブラシ塗装等で使われる「マスキングフィルム」を貼ります。
マスキングテープに比べれば粘着力が弱いですがラッカー塗装では跡が残ってしまいます。
したがってラッカー塗装にザグリ加工等でどうしても貼る必要がある場合は作業時のみ、
出来るだけ短時間しか貼らない様にしています。

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トレモロザグリとの境界線にはフィルムの上にマスキングテープを貼って
デッドラインを設定。
必要箇所を覆い、形状もなるべく普通に見える様にパネル形状、ザグリ冶具形状を書き出します。

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デザインが決まればアクリルクリアー板を両面テープで貼り付けて形状を写します。

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ザグリ用冶具を制作、そのうえでパネル元型を制作。
試し掘りしてパネル元型を微調整。
この作業だけでほぼ丸1日掛かってしまいました。

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ザグリ冶具を作るのはさほど時間が掛かりませんがパネル元型が大変。
僅かに大き目に削り出し、試し掘りのザグリに合わせて微調整していきます。
あまりにカッチリ嵌る様に作るとパネルの脱着が難しかったり、最悪は壁面の
塗装浮き、剥がれの原因にもなります。
ザグリ箇所の切り立った塗装角も僅かに丸めて面取りしますがパネルのサイズ感も重要。
大体は角のRの部分にワザと隙間を少し作って爪の先端ぐらいがパネルに引っ掛かる様にしています。

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パネル落とし込みザグリ加工完了。

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これでコントロール部を覆うパネル問題は解決したものの、どうしてもお客様施工の
ザグリが気になる。
形状や壁面底面の凹凸は勿論だが塗られたニスが気になる。
後に塗る導電塗料が食い付く様に粗めのペーパーで剥がすつもりではいたが
その作業の大変さを考えたらゾッとする。
幸いトレモロザグリとのデッドラインにはまだ僅かに余白がある。

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なので慎重に位置決めして新たに基板収納ザグリを施工。
少しニスが残ったがこれぐらいならペーパーで落とせるレベル。

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バッテリーボックス収納ザグリも掘ってボディー裏面のザグリ加工は終了。

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次にボディー表面、フロントのフルモードサスティナードライバー収納スペースを加工。

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スルーネック&アーチドトップ。つまりフロント周りのザグリ加工が困難になる条件が全て揃っています(笑)
物凄い嵩上げ&慎重な冶具水平出し、確実な冶具固定が必要。

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パネル元型をあてがってビス位置を決め、パネル、ボディー共にビス穴を開ける。

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ボディーのビス穴を開けてた時に「やっちまった」事に気付く。
後ろ角のビス位置が見た目に違和感の無い位置だとジャック部に貫通する。
ボール盤のビットを下していて急に軽くなる抵抗感…
夕闇迫る作業場で「あぁ…」と一人天を仰ぐ(疲)

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まずはパネルのビス位置変更。
マスキングテープを貼っている箇所がやっちまった穴の位置。

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やっちまったビス穴を埋め木するついでに純正パネルのビス穴も埋め木。

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新しいビス位置は勿論ジャック穴と干渉しない(笑)

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続いて導電塗料を塗る。
ピックアップザグリに塗ってからコントロール部施工前にポット穴をマスキングテープで塞ぐ。

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コントロールも塗布完了。
これにてボディー側の木工加工が終了。

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と、思いきや、
最初からずっと気になっていた、ピックアップザグリに導電塗料を塗っていて我慢出来なくなった
トレモロのピッチシフトキャビティー。
昭和世代のソロイスト大好きHR/HMオサーンとしては「ソロイストのピッチシフトキャビティーには
何らかの緩衝材を貼るべし」と思い込んでいるのでこの塗装剥き出し水砥ぎバフ無し塗りっぱなし状態が許せない。

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なのでウレタンシートを貼る。
弱めの両面テープで貼っているのでもしお客様は気に入らなければ簡単に剥がせる。

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さて、前置きが超絶長くなってしまいましたがサスティナーの組み込みに入ります。

実はボディー側を着工する前にお預かりしたサスティナー基板を別のサスティナーギターへ
組み込んで動作チェックを行っておりました。
スイッチや昇圧トランスを外す際に基板のプリントパターンが数か所剥がれていましたが
剥がれの常連箇所を修復してテストしたら正常作動しました。
その確認後、今回の組み込みスペックに合わせて改造。
仮組みでの動作チェックではサスティナーも駆動条件が厳しいながら何とか合格ラインで一安心。
いつもはこの仮組みから困難な作業が始まるのですが。
今回神様はザグリ周りでの苦労を見ててくれたのかな?(笑)
…なんて甘い妄想だったのですが…

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で、仮組み時に気になったのがトレモロスプリングハンガービスのズレ。
コントロールパネルとの兼ね合いでお客様に今後トレモロスプリングのバックパネルを付けるか否かを
事前確認したところ、付ける事は無いとの事。
つまりこの歪んだトレモロスプリングが常時見える事になる。

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スレの酷い1弦側のビス穴を埋め木。そして空け直し。
おそらく元穴は現行フロイドローズ付属の大陸製の香りが色濃いメッキが施されていない
怪しげなハンガーのビスピッチだと思う。
それでいて付けられたハンガーはビス穴ピッチの合わない国産汎用サイズだったが為に
ビスを斜めに入れて乗り切るつもりだったかと予想。

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ハンガーも常用するGOTOH製に比べれば金属の肉厚が薄いのでついでに交換。
(左が純正、右がGOTOH製)

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と、ここまでは順調だったのですが…
基板上の通電LEDの高さ=出っ張りを少し低くしようと、そしてフロントPUの音色コンデンサーの
値を変更と普段なら何でも無い作業を行ったら、

サスティナーの悪魔が突如現れた。

どうって事無い作業しただけで突然正常に駆動しなくなってしまった。

はいはい。また基板のプリントパターンが何処か剥がれたのですね?
探して直せば良いんですよね?
なんて思いつつ不具合箇所をテスター当てながら探す事…

数時間…気付けばほぼ半日…

決定的な不具合箇所が見付からない。

とりあえず正常駆動する様にはなったけど基板に指で軽く圧力を掛けるとダメ。

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で、現実的に考えた。
このまま終わりの見えない剥がれ探しを続けて、運良く全ての問題個所が見付かって修理出来ても
また別の箇所でトラブルが出る可能性もある。
お客様へ納品してからだと大変だ。
結局無駄な宝探しを何時間も続けるのはヤメて当店在庫のテスト用基板を同スペックで
組み上げる。この方が時間の使い方は有意義だ。

組み上げ完了。まぁそりゃぁ問題無く動きますわな(笑)

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つまり基板からスイッチや昇圧トランスを外すタブーを犯す事は
この類の突然現れる症状にも向き合う覚悟が必要だと言う事。
今回は1枚だけ残っていたテスト用基板と言う救世主に救われたが
メーカーは基本的に基板だけ、ドライバーだけと言ったバラでの販売は行っていない。
したがって今や貴重なサスティナーキット自体を無駄にしてしまう可能性も有る。
改造する前にそのリスクをよく考えて欲しい。

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トレモロハンガービスもこんな感じ。
歪みが無くなってスッキリした。誰が?⇒俺が。(笑)
これなら常時見えていても気にならないでしょう。

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パネル元型より黒のツヤ消し1Pで本番パネルを製作。
この冶具類は後ほどお客様名も記入して保管します。

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本番パネル取り付け。
ボディー裏面から面位置少しマイナスの高さで狙い通り。

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ようやく完成!

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これが全体像です。

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1VOL、3ミニトグルスイッチのレイアウト。
ボリュームの並びはサスティナーのON/OFF、モード切り替えスイッチ。
ボディー端がサスティナーOFF時のピックアップセレクター。
ボリュームポットはキルポット。

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リアPUは元から付いていたダンカンTB。
一度分解して磁極を入れ替えてから組み上げ、ロウ浸け済み。
配線レイアウト=基板への入力経路は4パターン試して一番駆動の良いパターンを採用。

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サスティナードライバー下には59Jr。
サスティナーOFF時、フロントPUとして機能するのはこの59Jrです。
このレイアウトでサスティナーをしっかりと駆動させるには基板の信号経路を改造する必要があります。
ただ付けただけ、配線しただけではサスティナーONで発振=高周波ピーピーノイズ祭りです。

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ドライバーには桜カラーのLEDを埋め込み。
サスティナーON時のみ点灯。

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ロードテストで電池が無くなるまでサスティナー起動で放置、それでも問題が発生しないかの
耐久テストです。
問題無かったので最終セットアップに入ります。

肝心のサスティナー駆動は一番動きが鈍い1弦のハーモニクスモードのローフレット近辺も駆動OK。
電圧の減っていない新品に近い電池なら1弦解放ハーモニクスモードもかろうじてOK。

お客様からお預かりしていた弦に張り替えるのですがこれまた気になっていたテンションバーの
ビス。近年のフロイド付属はコレですがトレモロスプリングハンガー同様、見慣れた類のメッキが施されていない。
ホームセンターで売ってる「ユニクロメッキ」仕上げと同じ物。
なのでGOTOH製ビスへ交換。
実際にリペア作業をさせて頂いた事があるのですがこのビス、柔らかいのか簡単に+のネジ穴が崩れます。
弦交換の際は外す事も多いので耐久性を考えれば要交換です。

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仕上げで張った弦はお客様お持込みのダダリオNYXL。
毎度の事ながらNYXLはサスティナーの食い付きが良く、言い方が難しいのですがサスティナーの効きが少し弱い
「節」みたいな箇所が無くなるか症状が軽減されます。

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NYXLでオクターブピッチ等をチェックしてようやく最終セットアップが完了。
基板のパターン剥がれと格闘しまくりでしたが良い感じで仕上がったかと思います。

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おそらくこのブログを見てでも自分でやってみよう、この仕様で馴染みのリペアショップへ依頼しようと
お考えの方は出るでしょう。

この仕様でサスティナーを正常駆動させるのは決して簡単では有りません。


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