FERNANDES MV-95HT アクティブPUの位相違いはフェイズ合わせ出来ないんです編
2021-06-12
久し振りに布袋モデルのネタで更新です。当店はサスティナー関係の流れから布袋モデルの作業をお受けする事が多く、
ゆえに近年の中古品はコンディションの良い物の流通が少なくなってきた事を
実感しております。
今回はTE-95HTとMV-95HTをお預かり、メインの作業はMVです。
画像は完成時ですが、こうやって2本並べると見応えがありますね。

MVは目立つ大きな打コン等のダメージが無い美品です。
元々生産期間が短く、生産本数もTEに比べると恐ろしく少ない。したがって中古の
流通在庫本数も少ないのでコンディションの良い物に出会うには運頼みでしかないかも
しれません。

さて、時はお預かり時に戻ります。
お預かり時、ピックアップはフェルナンデス純正のアクティブピックアップ、
FGIテクノロジーが載ってはいましたが、フロントはロゴカラーが白、
リアは金文字でした。
白文字はFGIの最初期モデルになります。MV純正は金文字のはずなので
フロントは何かしらの理由で交換されているかと思われます。

ところがこの白文字。金文字の組み合わせでは大きな問題があります。
白文字と金文字では同一メーカーの製品にもかかわらず、位相が異なります。
パッシブPUでは位相の異なる2個をミックスで鳴らした時、出力は下がりますが
音は出ます。←フェイズアウトの状態。
そしてどちらか一方のホットとアースを入れ替えて位相を合わせれば解決しますが、
アクティブの場合はコイルの後ろにプリアンプが有るので位相を変更する事が出来ません。
そしてミックスでは音が出なくなります。
したがって今回は白文字か金文字に統一する必要がありますがFGIは中古でしか入手出来ません。
なので今後安心して使用出来る様にEMGへ載せ替える事になりました。
ちなみに金文字以降の青文字、銀文字、サスティナー対応のFGIは金文字と同じ位相なので
同居可能です。

まずは低いフレットを打ち換えです。
ネックには軽度ですが捻れの症状が見られたので指板修正をきっちり行います。

時節柄指板修正時もトラスロッドを頻繁に調整するのですが、お預かり時より
ロッド調整ナットの動きが硬いのが気になっていました。
慎重にレンチを回してもクッ…クッ…クッ…ククゥ~~とある時点で突然大きく動くので
微調整が難しかったのです。

なので先に手を打ちます。
調整用の六角ナットを外し、

ロッドのネジ切り部に粘度の高いシリコングリスを塗ります。

塗るのはネジ切りの上部だけ。
下面や六角ナット底面にはナットを締め込めば馴染むので。
ちなみにサビや汚れが酷い場合は除去してからグリスを塗ります。

六角ナットを締め込みます。

ウソみたいに軽く動く様になりました!
実は普段からネック調整の際に必要であればロッドのナットが外せる構造の場合は
この作業を行っています。

ようやく指板修正も完了間近になって記録的に早い梅雨入り。
一週間雨続きになったのでケースに仕舞い、布団圧縮袋に入れて湿度をシャットアウトして
天候(湿度)回復待ちになりました…

ネックが外れない=ボディー側のみの作業を進める事が出来ないので
先に取付けるスムーズポットを製作します。取付けるEMGのピックアップは新品なので
ポットが付属してきますがスムーズな回転トルクを得るべくCTSを改造します。
MVで使用するのは2個ですが同時にお預かりしているTEも交換するので4個です。

ようやく雨続きが治まったので指板修正の仕上げを行いフレット打ち。
フレットはJESCAR#55090。

すり合わせやフレット端の面取りも終わり指板にオイル入れて一段落一安心。

ボディー側の作業に取り掛かります。
まずはCTS用にポット穴を拡大。

ピックアップザグリ2箇所、コントロールザグリに導電塗料を塗布。
各ザグリを優先で結線。

配線作業完了。
電池はスペースが十分に有るのでバッテリークリップを取付けてしっかり固定。

パネル裏にもアルミテープを貼って完成。

TEのポット交換も完了。
TE純正のふにゃふにゃバッテリースナップをEMG付属のしっかりした物へ交換。
こちらは電池クリップを付けるスペースが無いので後ほどウレタンシートを敷いて
電池と配線部を絶縁。
ついでにジャックもEMG付属のノイトリック製へ交換。

EMGはフロントが85、リア81の2ハムでは定番の組み合わせ。
これにてボディー側の作業完了。

ナットの製作に取り掛かります。
今回使用するのは本カーボンナット。
近年のTEJデラックスに付いていますね。
純正のジュラコン製よりも硬度が高いので高域のヌケが良くなります。
そして何より格好いいです。高級感出ます。

ナット上面は積層面になります。
上面がカーボン格子柄なら更にカッチョイィのに。

ナット完成!

弾く姿勢で構えた時に格子柄見えたらちょっとテンション上がりませんか?

時間掛けてセッティング出しも終了。
しっかり鳴りの出るギターに仕上がりました!

そう言えばこの頃のフェルナンデスはフェル社オリジナルのロックピンが採用されている
モデルが多く、このMVは埋め込み式になっています。
同ロックピンはベースでもよく採用されていたと記憶しています。

中古ではストラップ側が欠品している事が多いのですが、
今回のMVはしっかり付属していました。
ちなみに欠品の場合はジムダンロップのロックピン、ストラップ側がとりあえずは代用可能です。
とりあえずと書いたのは製品誤差でロックの掛かりが甘い組み合わせも見た事があるので。
ダンロップがしっかりロック出来ていない場合はロックピン一式の交換をお勧めします。

相変わらず人気の高い布袋モデル。
そして布袋、HIDE、SUGIZO、TAK松本…
跡継ぎとなるカリスマ性を持った=爆発的にシグネイチャーモデルの売れる様な
ギターヒーローは未だ現れず。
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