fc2ブログ

ピックアップの線材を根元から引き直す編

 2021-12-04
告知などではないブログアップは久し振りになります。

有り難い事に作業は忙しくさせて頂いておりますが、フルレストア作業が多く、それも今まで
ブログに書いた内容と同じ様な作業ばかりで一言で言えばネタ切れでした。

今回はピックアップのワイヤリングを根元から引き直す作業をご紹介。

ヴィンテージのみならず作業をお受けする機会が増えてきたのがオールドダンカンやギブソン系の
ピックアップ。
線材の短い事の多い中古ピックアップですが、単に線材を継ぎ足して延長するとその箇所が
ボディーのワイヤーホールに引っ掛かって通せなかったり他の線材の邪魔になったりと
出来れば新品と同じく配線の引き回しをしたいところ。
また継ぎ足し部のハンダ作業で微弱ながらも電気信号の減衰はあるでしょう。
何よりも精神衛生上、継ぎ足し無しでピックアップ本来の信号を出力したいですよね。

pu1_20211127153246fd3.jpg


今回は複数個まとめてご依頼頂きました。

pu2_2021112715324701b.jpg


まずは作業前に抵抗値計測。
ご依頼頂いたお客様は常連様で中古ピックアップにも精通しているので抵抗値チェック済みでは
あろうけど一応念の為。

pu3_20211127153246c2d.jpg


早速分解に入ります。
ピックアップ外周のアセテートテープを剥がし、裏面のボビン固定ビス4本を外します。
大体の洋モノPUはこのビスがブラス=真鍮なのでビス素材として柔らかい。
+やーのビス穴にロウ浸けのパラフィンが残っている場合はきっちり除去しないと
ドライバーの掛かりが浅く、無理に緩めようとすると差し穴をナメてしまうので要注意。
パラフィンで差し穴が埋まっている場合は爪楊枝等で綺麗に除去して下さい。
またサイズが合ったドライバーを使用する事も重要です。

pu4_20211127153247668.jpg


次にアジャスタブルポールピースがシャーシーから完全に抜けるまで緩め、
シャーシーとのアース線を外します。

pu5_202111271532473ac.jpg


ダンカンのトレムバッカーはボビン外周の銅箔テープにもアース線が繋がっているので
作業時は取り扱い注意です。

pu6_2021112715324743c.jpg


ダブルアジャスタブルポールピースのピックアップは全てのポールピースを
緩める必要があります。


ディマジオでは六角穴のダブルアジャスタブルポールピースのモデルが多いですが、
ポールピースを緩める際にはインチサイズのレンチが必要です。

pu7_20211127153249699.jpg


分解完了。
ボビン固定ビスやボビン下のスペーサーをなくさない様に。

pu8_2021112715325026d.jpg


交換する線材はモントルーが販売している4芯シールド線。
1mの切り売りで便利なのですが、耐熱線材でないのが残念。
とは言えダンカン等も純正の線材は耐熱ではないので仕方ないのかも。
配線作業時はハンダを当てる時間を可能な限り短く済ませる技術が求められる。

pu9_20211127153252457.jpg


さて、本格的に線材交換に入ります。

pu10_20211127153253dbc.jpg


ダンカン純正もモントルーの線材も色は白黒緑赤。
各線材の接続先は様々ですが大体のピックアップメーカーはこの4色なので
ユニバーサル規格の4色と言っても良いかもしれませんね。
ちなみに少し古い国産系ピックアップだと茶黒赤オレンジなど様々です。

pu11_20211127153255e9c.jpg


ボビン(コイル)と繋がった線材と出力線の絶縁フイルムを剥がし、新しい線材の同色と
ハンダ付け。そしてΦ1ミリの収縮チューブを使用して絶縁。
先端はプライヤーで平たく潰して完全に密閉します。

pu12_2021112715325621e.jpg


実はこの作業こそが線材入れ替えで一番神経を使いますが、ボビン側=コイル側からの
白/黒の線はコイルに直結しているので強く引っ張る事は出来ません。
元の絶縁フイルムを剥がす際や線材の被膜を剥き直す際は線材をしっかり固定して
コイル側を絶対に引っ張らない様に注意が必要です。
仮にコイルと線材の接合部が断線したとしたら、コイルの巻き終わりなら繋ぎ直せますが
巻き始めだとどうにもなりませんので。



pu13.jpg


裸線=アース線をシャーシーの元々のアース接続部へハンダ付け。




pu14.jpg


シャーシーのワイヤーホールへ線材を通す。

pu15.jpg


ボビン固定ビスを軽く締め込んで仮組み。

pu16.jpg


各線材の収納スペース、収納方法を考えながら、

pu17.jpg


線材先端部を剥いてから改めて抵抗値チェック。
実は画像はありませんが各作業段階終了ごとに抵抗値チェックしています。

pu18.jpg


アジャスタブルポールピースも締め込んで本組み上げ。

元のロウ浸けパラフィンやボビンテープのベタ付きで黒い粘着性の汚れが
ボビントップや手袋にベッタベタに付いていますが、

pu19.jpg


ステッカー剥がしで一掃出来ます。

pu20.jpg


キッチンペーパーや厚手のティッシュにステッカー剥がしを吹き出して
軽く拭き取ればスッキリ!

pu21.jpg


主作業のラストは外周にアセテートテープを巻きます。



pu22.jpg


1周ちょっとだけ巻きますが、巻き終わりの部分には粘度の高い瞬間接着剤を
一滴=米粒より少し小さいぐらい垂らします。
これは後のロウ浸け=ポッティング時の熱でアセテートテープが剥がれるのを
防ぐ為です。

pu23.jpg


最後にもう一度抵抗値チェック。

pu24.jpg


完成。
この線材の長さなら大抵のギターなら問題無いはず。
作業受付時にフロントなのかリアなのか、どんなギターにマウント予定かを
お聞きして完成時の線材の長さを打ち合わせしております。

pu25.jpg


ロウ浸け=ポッティング。


エンジニアによって浸ける時間は様々ですが自分はシャーシー裏面のロウが完全に溶けて
鍋の上からシャーシーがクリアーになれば引き上げてます。
時間で言えばタバコ1本をゆっくり吸い終わるぐらいでしょうか。

pu26.jpg


鍋から引き上げたらしばらくはシャーシーを上側=ひっくり返した状態で冷ましますが
少し熱いながらも素手で持てる程度に冷ましたら先にアジャスタブルポールピースの
ネジ溝に入り込んだパラフィンを爪楊枝で除去します。
完全に冷えてからだと綺麗に取りにくいので。

pu27.jpg


ボビン表面に残ったパラフィンはステッカー剥がしで除去します。
先に書いた時と同様、何かしたらのペーパーに一吹きしてからボビンに擦り傷を入れない様に
優しく拭き取ります。

pu28.jpg


完全にパラフィンが固まったら最後の抵抗値チェック。




pu29.jpg


全て完成!
さすがに個数が多くなるとそれなりに作業時間が掛かりますな。

pu30.jpg


今回の様な作業は1個6000円~7000円でお受けしております。
分解出来るピックアップのみ対応で、アクティブやピックアップカバー内にエポキシ樹脂で
ピックアップ本体が固定されている物は作業不可能です。

1芯モデルをタップ配線等可能な4芯化も工賃追加になりますが作業可能です。

近年はネット通販で並行輸入のダンカン等はかなり安いので基本的にはオールドダンカンや
ビンテージなどにお勧めのメニューになります。





スポンサーサイト



タグ :
コメント












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
トラックバックURL:

http://tonegarage.blog52.fc2.com/tb.php/485-d15f8cdc

≪ トップページへこのページの先頭へ  ≫