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ジャパンビンテージレストア!VOL.2 Navigator by ESP LHストラト編

 2022-03-05
さて、ジャパンビンテージレストア2本立ての2本目はナビゲイターの左利き用ストラトです。

今も昔も左利きのプレイヤーはギター選びが難しく、欲しいギターに左利き用が
ラインナップされていなかったりされていても生産本数が極端に少ないので入手困難だったりと
皆さんかなり苦労されてきております。

今回のストラトも当時オーダーで製作されたらしく、買い換えるにも左用の選択肢は狭く、
ましてや国産となればより一層、新品・中古問わずとも難しい状況なのでレストア受注となりました。

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このロゴサイズ、形状からしておそらくはナビゲイターでも初期の頃では?と思います。
自分がギターキッズだった当時、シェルドンギターズに入り浸っていたのを思い出します。
その頃より隙有ればオーダーを勧めてくる商法は今のビッグボスでも健在みたいですが(笑)

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それでは早速着工。
何十年と弾き続けられてきただけあってフレットは激減りです。
弦直下の凹み減りはもちろんの事、ハイフレットもかなりぺったんこです。

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ペグもかなり劣化しており、外見だけではなく回転トルクもかなり重ためです。

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ギター全体の年齢の重ね方に比例した金属パーツのやつれた質感の空間にピカピカ新品の
ペグが付くと違和感しか無いのでペグ一式を外して徹底的にメンテナンスする事を決意。
決意とは言いつつその時が訪れたら溜め息出るんやろなぁ…と。

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早速ネックを外すもネックジョイントスクリューの根元が完全にサビている。
お持ち込み時にトラスロッド機能チェックで初めてこのビスのサビを見た時には
「あ~普通にビス外せて良かった~今日なんかツイてるんちゃう?」てのが本音。
と、言うのもこの手のサビはビスを緩めようとした瞬間に頭だけがポロッと取れて
ビス本体は木部に残る事が珍しくないので。
ラッキーを感じた反面、ジョイントビスがここまで茶サビに浸食されているなら
他のビスは…と新たな緊張感を感じた。

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無事にネックは外せました。

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トラスロッド調整部にはメンツェルナワックスが固着していてロッド調整がかなり硬い。
この後も頻繁に触る場所なので先に手を入れようかと。

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ビュレット抜き出して内部を清掃。ビュレットも研磨。
グリスアップしたら普通の力でロッドは回せる様になりました。

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ペグを外す。

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ペグブッシュも抜き取る。

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フレット抜いてまずは指板修正から。
問題となる様なクセは見当たらないのが救いでした。なぜなら…

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ラウンド貼りの指板がめっちゃ薄い!
つまり指板修正での削りしろが少な過ぎるから。
必要最低限の指板修正にとどめるつもりもハイフレットは少しハネ上がっているので
削らざるを得ない。

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ハイフレットの修正時には可能な限り無駄な力を入れず、数回治具を動かしては
スケール当ててキャンドリング。
「頼む!これでストレート出てくれ!もう削らなくて良いと言ってくれ!」みたいな
訳の分からない独り言を呟きながら何とか指板修正完了。
しっかりした金筋=木目からも分かりますが硬めで油分も少ない上質なローズ指板でした。

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時は進みフレットを打ち終わり、フレットすり合わせに入る。
年明け頃にDIY派の常連様にフレットエッジの面取りの方法を聞かれたので載せてみる。
すり合わせの研磨、中目に入ったあたりでエッジの面取りを行っています。
中目の段階で作業すれば面取りによる切削痕もその後の研磨で消せるので。

刃のへたった極細目の金属ヤスリで手首のスナップを効かせつつ「力を入れずに」
フレットエッジをなぞる様に削ります。
削り具合は見た目ではなく手に伝わる感触で判断。不思議と視覚に頼って整形しながら
削るよりも手に伝わるジョリジョリ感を均一にするイメージで面取りした方が綺麗に
仕上がります。←書いてて自分でも何言ってんだかよく分からないが(笑)

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仕上がり時までにはかなり研磨する=面取り面が摩耗するのでこれで結構削った感じです。

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フレット根元の傘の際の部分は極細目の目立てヤスリにて。
これも力を入れずにフレット根元の直線部からエッジの根元にかけて這わす感じで。
うん。これではたぶん何も伝わらないな。T様、また連絡下さい(笑)

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面取り完了。
研磨も完了。

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弦落ちを防ぐべくフレットの耳は立てぎみで仕上げるのでエッジの面取りは
演奏時、ポジションチェンジの手触りで感触を左右する重要な要素になります。
ごく稀に弦を張って最終調整まで進んでから「んん…もうちょいだな。あと本当ちょいだな。」と
面取り作業をやり直す事もあります。完全に自己満足の世界かもですが…。

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これもよく聞かれる。
「指板に塗るオイルって何使ってますか?」
以前もブログに載せた事がありますが大昔からフェルナンデスの424です。
別に高いオイルではありませんがローズネックオイルと言うだけあって指板が
良い感じに染まります。オイルの粘度も丁度良く、流れすぎずにしっかり導管に
残る感じ。

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ネック側の作業終了。
フレット磨いたり指板にオイル入れてる時には少しだけ憂鬱になる。
そう。これが終わればペグ研磨が待っている。
タイムリーな表現をするなら
「あー今日仕事終わったらワクチン接種なんよなぁ…って事は明日は熱出るんよねぇ…」
みたいな近い未来の確定された不幸を迎える不安から来る憂鬱感(笑)

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でもヤルでぇ~~!

完全にザラつきが出たペグ表面は強めに研磨確定としてもクルーソンは形状からして
細かい箇所にワイヤーブラシが入りにくいので本当は小回りの効く細目のスチールウールで
ゴシゴシやりたいところだ。
しかしギア内部への注油口が開いているのでギア内部に鉄粉を入れるわけにはいかない。
画像は撮り忘れましたがホームセンターに出掛けて大きめの歯ブラシぐらいの小型で
毛先が柔らかいワイヤーブラシを購入、木工用ヤスリやボール盤のサビを磨いて良い感じに
へたらせてからペグ研磨に投入。

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右が研磨済み。
画像では分かり難いですが目立つ傷も入らずにザラつきやサビを除去出来ました。

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6個研磨して取付け。

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もちろんブッシュも研磨。
組み付け時にはブッシュ内面とペグシャフト接触部にのみペースト状のシリコングリスを
薄く塗布。ギアボックスには注油口より粘度高めのスプレーグリスを注入。
ペグの手触り、回転トルク共にかなり改善出来ました!
ロトマチックではないので個別の回転トルク調整は出来ませんが実用上問題となる
硬さが残る場合は注油してからワインダーで100回ほど空回ししてグリスの馴染みを
促進させる事もあります。
画像では付いてませんがテンションガイドもきっちり研磨済みです。

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ようやくボディー側着工です。

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フロント&センターは珍しいダンカンのカバードタイプ。
中身はスタックコイルのハムバッキングでした。
興味が出たので後の組み上げ時にフロントだけサウンドチェックしました。
バーチャルビンテージやFURYに慣れた耳にはかなり中域寄りに感じられました。
やっぱハムはハムでしたわ(笑)





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そして蘇る緊張感。
もしお手持ちのギター、ベースでドライバーや六角レンチ差し込み口が崩れかけている
ほどにサビが出ているなら外す際は慎重にお願いします。

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ご自分で外すのが怖い場合はご相談下さい。

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「あのー錆びたビスを外そうとしたら頭だけポロッと取れてビスは木部に残ったので
リペアお願い出来ますか?」とお問い合わせ頂く前に
「サビてて外すのがヤバそうなビスがあるのですが見てもらえますか?」的な
お問い合わせを頂く方がまだ救われます。誰が救われる?←私が。(笑)

お客様が折ったビスは「あーあー仕方ないな…」なテンションで作業になりますが
私がビスの頭を飛ばしたなら「仕方ない。直すゼ!」と開き直って新たなアゲテンションで
作業に当たれますので(笑)
つまりサビで折れるビスはどんな外し方をしても折れる時は本当に簡単に折れます。


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前置きが長くなりましたが冷や汗かきながらピックガード外しました。

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トレモロも外してボディー研磨に入るゼ!ってな所で、

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表側からは「軽く研磨するかな?」程度に見えたエンドピンは

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ビスの根元が激サビでした。
この頃にはサビ耐性が出来上がっていて「あ、やっぱりね。サビてるね。」なテンション。
エンドピン一式交換確定の瞬間でした。

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さて、今回はポット類、レバースイッチはもちろんですが、ピックアップも載せ替えます。
抜群の安定感を持ったロングセラーでド定番、ダンカンSSL-1を3発です。
当然レフティーモデルでセンターは逆磁逆巻きのRWRP。
やはりハーフトーン時のハムノイズキャンセルは便利ですので。
ちなみにこの組み合わせ、センター+リアのハーフトーンでは良い感じの色気が有ります。
カッティングでもフレージングでも気持ちいいザ・シングルコイルサウンドが楽しめます。

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ド定番にはド定番なりの理由がありますのでストラト弾きの方で最近ヴィンテージ路線の
高域寄りサウンドに飽きてきた方は是非お試しを。

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シングルコイルのマウントには付属のゴムチューブは使いません。
ヴィンテージ模倣コンセプトの作業時以外はスプリングを使います。
理由は画像左端の純正ゴムの成りの果ての通り、ゴムチューブは加水分解でいずれ
カッチカチになって反発力ゼロになってしまうのが分かっているので。

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今回のノブ類はローレット付きなのでミリ規格シャフトしか使えません。

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したがってミリ規格シャフトのカスタムCTSを使います。
回転トルクが元のポットよりかなり硬めなので分解してグリスを入れ替え、
スムーズポット化して回転トルクを軽めに改造します。
前から気になってますが表記はカスタムCTSのミリ規格シャフト品、コレたぶん
カスタムCTSやなくて普通のCTSやと思う…
カスタムCTSよりキャップ部分が明らかに薄くて柔らかいんですよ、
ベースプレートの質も違う。

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配線完了!!

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上から見たらこんな感じですが、

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はい、ポット間アースは側面でしっかり取ってますよ~!

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新品エンドピンをフエルトワッシャー挟んで取付けて

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ボディー側完成。

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実は配線作業してる時には既に例の憂鬱感に包まれておりました…
憂鬱感第二弾は「たぶん簡単には取れないぞサビサビイモネジ付きトレモロ」
の研磨作業です。

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はい。普通に取れたイモネジは12本中4本だけでした。

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残りはバイスにサドル固定して食い切りで回し引き抜きます。
このサビきったイモネジは再利用しないので遠慮は要りませんが食い切りを強く
握り過ぎるとイモネジ自体を折り切ってしまうので力加減が難しい。

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意外にすんなり抜けて一安心です。
この作業が最も大変なのは取付けビスがオフセットしたフェンダーのアメスタです。
アメスタはイモネジとサドル内面が両方とも強烈にサビて固着するので油を差そうが
ワイヤーブラシでサビをある程度除去しようが毎回苦労します。
完全固着アメスタに比べれば今回は楽勝でした。

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ついでにサスティーンブロックまでも分解。
断面の色を見ても分かりますがブラス(真鍮)ブロックでした。
こういう所、ジャパンビンテージは本当に真面目に作ってるなと感じます。

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ベースプレート裏面のサビや汚れはワイヤーブラシでササッとクリーニング。

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サドルの弦穴は綿棒をプライヤーで潰して掃除。



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研磨・組み込み完了。



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新たに取付けたイモネジ、サドル固定ビスはステンレス製です。

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トレモロスプリング、スプリングハンガー、ハンガー固定ビスも新調。

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ネックジョイントプレートの裏面はワイヤーブラシで研磨、クッションプレート内面には
青サビが固着していたのでクッションプレートは新品へ交換します。

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なんかチタンみたいな質感。良い感じのくすみ具合です。
さり気ない主張の小さなESP刻印。

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ナット製作してセットアップ。
左利き用は毎回ナット製作での溝切り微調整が難しい。

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完成!
弦高セッティングは感覚ではなく12F上で弦との距離を実測で調整、細かいニュアンスは
お客様に試奏して頂いてからご希望に沿って微調整します。
普段からも数値である程度の弦高を調整してから自分で弾きながら感覚での微調整を追加、
お客様引き取り時に試奏して頂きながら最終調整ですが左用は自分の感覚での微調整が
難しいので。

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これも毎度の事なのですが、外したパーツ類は全て返却しております。
おそらく今後使い道は無いので処分される方も多いとは思いますが
ギターと共に長い時間を過ごしてきたパーツ類なので邪魔にならないなら
保管される事をお勧めしたいところではあります。

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ここまでブログ2本に渡り長々と書きまくってきましたが、お付き合い頂き有難う御座いました。
また明日から新たなレストア作業に着工致します。

とは言えですね、またもや憂鬱感に包まれているんですよ…
次のレストアが大変だから? いえ、違います。

まだね、何も手を付けていないんですよ…

確 定 申 告 。

もう期限まで一週間無いし(汗)






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