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レアなOVATION製ソリッドギター、PREACHERを2本作業。工夫を凝らし、真面目に作られたヴィンテージでした編

 2022-04-02
はじめにお知らせです。
4月4日(月)は臨時休業とさせて頂きます。ご了承下さい。

さて、今回はオベーションのソリッドギター、PREACHERを2本作業させて頂きました。
画像上のサンバーストのポットデイトが77年、下のナチュラルが76年、エレアコの
イメージの強いオベーションとしてはモダンな感じですが今やヴィンテージギターの
カテゴリーになりますね。
ご依頼頂きましたお客様は以前よりサンバーストを所有、最近ナチュラルを買い足された
との事です。



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まずはサンバーストの方から着工します。

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ピックアップセレクターがピンタイプのトグルスイッチからミニトグルスイッチへ交換
されています。これまでにリペア歴有りとお聞きしております。



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ボディー裏面のマイナスネジを外したら、



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ブリッジが外れます。

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ブリッジアースの線がクリップ式の留め具で固定されています。
この留め具を入れる事が出来るスペースが有ればしっかりとアースが取れる良い方法だと
思います。

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まずはフレット交換から。
長年弾いてこられた様で結構減っています。

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硬そうなエボニー指板だったのでフレットを抜く際に大きなチップが出ないか冷や汗
ダラダラでしたが、フレット近辺のみスチームを当てながら慎重に作業。
小さなチップもほとんど出ずに全フレットを抜く事が出来ました。

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続いて指板修正作業。

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指板修正に入る前にネックの詳細な状態を600ミリのスケール当ててチェックしていて
気付いたのですが、画像右側=6弦側の指板エンドが薄い。つまり6弦側の指エンドのみ
指板の跳ね上がりによるビビリ対策が施されています。
90年代のコンポーネント系で最終フレット付近の指板を意図的に落としているメーカーは
ありましたが70年代後半で既にこの様な工夫が施されていたのには驚きました。
「たまたまこのサンバーストだけの誤差なんじゃないの?」と思ってナチュラルの方を
確認したら同じ加工になっていました。
いわゆるヴィンテージとされる年代のギターでこの手法を取っているのは初めて見ました。

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指板修正完了。縞黒檀ながら木目が細かいので良い艶に仕上がりました。

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フレット打ち完了。
抜く時と同じでチップが出ないか不安でしたが無事打ち終えました。
ビビリな性格なので敢えて雨の湿度が少し高い日を選んで作業。

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フレットエッジの処理、すり合わせも完了してフレット周りの作業は終了…
なのですが、ネックとしてはまだ終わりではありませんでした。



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ネックジョイントに貼られた何かしらのラベルが塗装と固着してカリカリに乾燥しています。
基本的にデタッチャブルネックはネックとボディーの密着度が重要と考えているので
このまま組むのはちょっと気が引けます。

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綿棒にステッカー剥がしを染み込ませて当ててみるも完全に硬化しているらしく
何の変化も起きない…

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ならばと側面壁にマスキングテープを貼り、こぼれ対策をした上でガッツリとステッカー
剥がしを吹き付けるも残念ながら状況変わらず…

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結局めちゃくちゃ時間は掛かりましたが水研ぎ+バフで仕上げました。

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ジョイント面が仕上がって一息ついているとヘッド側面の打コンが気になり出す…
打コン周辺の塗膜が浮いているのでクロスや衣服が引っ掛かればペリッと剥ける
可能性が高い。

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ヘッド表面には以前に作業されたと思われしタッチアップ跡が有る。

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なので傷口の拡がり防止の意味合いでタッチアップ作業。
この薄い茶色はタッチアップ時に着色するとヘッド表面の様に逆に目立つ結果になりやすい
ので着色無しで作業。
指でなぞっても段差を感じないぐらいにしっかり仕上げました。

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ようやくボディー側に着工。

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まずはジョイント部から。
こちらは塗装の無い木部に直接ラベルが貼られているのでネックとは固着の状況がが少し違う。



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綿棒で少し水分を落としてはドライヤーを弱く当てて2~3ミリずつ剥がす。
気が付けば1時間半掛かってしまったが何とか除去成功!

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仕上げにオイルフィニッシュ用のオイルを少し染み込ませて完了。
フェンダーUSAはネックジョイントに製造工程のチェックシート?みたいなまぁまぁ
厚めのラベルを貼っているが何で貼るかねぇ…誰よりもデタッチャブルネックに関して
知っているはずのメーカーなのに。
とは言え自分もヴィンテージとして年代の推定や資料価値が有りそうなラベルは絶対に
剥がしませんが。

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お次は電気系。
今や懐かしささえ感じるビタミンQコンデンサーや配線材がウエスタンエレクトリックで
チューンナップされている。

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が、
ノイズ対策として貼られているアルミテープは堂々の重ね貼り。
重ね貼りすると粘着面で導通が途切れてしまうので意味が無い。

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ピックガードを外したボディー表面も同様。
なのでアルミテープを剥がして導電塗料を塗ってしっかりノイズ対策を施します。



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テープは剥がせどもねっちょり残った粘着面。

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必要箇所にだけステッカー剥がしを染み込ませてちまちま剥がします。

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導電塗料塗布完了。

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コントロールパネル裏面にアルミテープが貼られているのでザグリと通電させるべく
ビス穴周辺に銅箔テープを貼り、導電塗料を塗って導通を確保しています。

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次にストラップピンの位置を変更。
このサンバーストはカッタウェイ先端がオリジナル?かもですが数カ所に移設跡があり、
ストラップを掛けた際のバランス取りが難しい模様。
ギブソンのSGと同じ様なヘッド落ちかもしれませんね。

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ナチュラルの方はジョイント部が純正状態の様です。
なのでサンバーストもこの位置への移設をお客様から希望されたのですが、製造年たった1年
の違いでストラップピンの位置仕様変更が行われたのでしょうか?



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カッタウェイ先端の元穴は埋め木加工。

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コントロールはボリュームポット2個が近年のロングシャフトに交換されていましたが、
少しガリも出ていたので2個共カスタムCTSへ交換。
線材もウエスタンエレクトリックは除去。
ステレオアウト仕様のダブルジャックですが、お客様はモノラルアウトしか使わないとの
事でしたので、ステレオアウト側はダミー化。
モノラルジャックはスイッチクラフトへ交換しました。

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何故ウエスタンエレクトリックを除去したのか。
線材としては単芯の針金状で負荷抵抗も低く、高域特性は優れているので音質面だけで
なら良いケーブルだとは思います。

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ですがハンダ付けする被膜を剥いた部分をラジオペンチで挟んで、

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たった一往復曲げるだけで簡単に折れてしまいます。折れると言うかポロッと取れる感じ。
外装被膜が紙質ゆえに経年劣化で被膜内部にサビが出ている物も見た事があるので
高域特性は優れていますが個人的にはNGです。

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最後に無漂白牛骨でナット作って完成!
ではありますが時間を掛けて弦高=ブリッジ高を詰めてプレイアビリティーと鳴りの
バランスが取れたポイントを探しました。

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作業前はフレットが減っていたのもありますが生音の大きさ、音の拡がり、立ち上がりは
バッチリ向上出来たと思います。

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さて、2本目のナチュラルに着工します。
こちらはセレクタースイッチも純正でオリジナル度が高いのでお客様と打ち合わせのうえ
ヴィンテージとしてのキャラクター重視でメンテナンスします。

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まずはネックジョイントを外す。
こちらは何かしらの文章が読み取れます。

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何が書いてあるかは分かりませんが資料価値が有るかもしれないのでこのままにします。

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フレットもオリジナルでしたがやはり6弦指板エンドは薄くなっています。
真面目に頭使って楽器作りしてるなって感じ。

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コントロールもフルオリジナル。
ですがお客様と相談の上でアルミテープを剥がして導電塗料を塗る事に。
ちなみにアルミテープですが、厚みがしっかりあるので環境によってはアンテナ化して
逆にノイズが増えたり高域が減衰するハイ落ちの原因になります。
かなり前にブログに書いたと記憶していますが、60年代仕様やヴィンテージのフェンダーで
ピックガードとボディーの間にピックガードと同型の薄いブリキ質の板が挟まれていますが、
あの1枚を抜くと少しトレブルが強調されます。



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ポット類外して休憩中に何気にパネルを載せてみる。
落とし込みザグリとパネルに無駄な隙間が無い。
ある意味日本人的な作り込みを感じる。

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そしてまたまた粘着面剥がし。
ステッカー剥がしを染み込ませてはプラスチックのヘラでキズを入れない様に
少しづつちまちま剥がす。

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このプラスチックのヘラ、ステッカー剥がしを買うと1枚だけ付いてくるが耐久性は無い。
なので普段は先の曲がったヘラを削って再生したりピックガードの端材でヘラを自作したり
していたが、何と近所のホームセンターでヘラだけの販売を発見!
見付けた時は思わず「おっ!」って声出たわ(笑)

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剥がし終えたので導電塗料を。
今回もコントロールザグリとパネル裏面は銅箔テープで導通を繋ぎます。

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テープ貼ってから、塗る。

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電気系を元通り組んでステレオジャックを無効化、モノジャックのみ交換してから
一通りのフルメンテナンス作業、そしてセッティング。
トラスロッドカバーが交換されている様で、ビス穴が複数空いていたので不要なビス穴を
埋め木。

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ようやく2本共に完成。

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70年代後半でオベーションでありながらソリッドギター。
見る人によってはビザール系と捉えるのかもしれない。
しかしながらその作り込みは実に真面目で工夫に富んだギターでした。









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