音楽活動再開準備!ヒスコレ3本フルメンテナンス編
2022-04-16
まずはお知らせです。来週土曜日23日は臨時休業とさせて頂きます。ご了承下さい。
さて、最近ご依頼の増えているフルメンテナンス。
まん防も明けて音楽活動の再開に向けての準備ですね。
聞くところによればライブハウスのブッキングも混雑しているらしい。
一時はライブハウスが諸悪の根源みたいな扱いだったので嬉しく思います。
今回はバンド活動再開の為のフルメンテナンス。
ヒスコレの56、57、エイジド59の3本フルメンテ作業編です。
当店のフルメンテナンスはお問い合わせの多い人気リペアメニューですが、
どんな作業? どんな道具やケミカル使って何してんの? どこまで作業するの?
のご紹介です。
ジャック交換など一部フルメンテナンス基本工賃外の作業も含まれておりますのでご注意下さい。
基本的に3本同じメンテナンス内容ですが個々の特徴の有る内容のピックアップになります。

まずは56から。

お預かり時の弦の劣化が著しく酷くない場合は軽くロッド調整してから
オクターブピッチを確認します。
下の画像の1&2弦の様に明らかにオクターブ合ってないな…みたいな場合は尚更です。
これは最終セットアップ時に張る弦になるべくダメージを与えない為です。
最終張る弦がコーティング弦であれば確実に事前に仮調整しています。

この56のブリッジはワイヤレス(サドル押さえの針金の無い)ABR-1。
ワイヤレスABR-1の特徴としてサドル脱落防止の為にサドル取り付け部がかなりキツめ。
なのでオクターブ調整ビスを少し回すと…

サドルをブリッジへ圧入?しているのか
ビスが曲がってしまっているのでサドルごと浮き上がってきます。

サドル外して

ビスを抜くとこんな感じ。
しかしこの曲がりを無理に修正するのは御法度です。
簡単に折れてしまいますので。

ビス位置によってはサドルが浮き上がるのでワイヤレスABR-1のオクターブピッチ調整は
ある程度の妥協も必要だったりします。

ピッチがきっちり合った2弦ですが残念ながらこの位置ではサドルが浮き上がって
しまっています。
この場合は近い位置でサドルがしっかり嵌まる所で妥協するしかありません。

割と多いのが
「弦はまだ使える状態なのにオクターブピッチが合わない。ブリッジ・ナットの状態を
みてもらえますか?」なお問い合わせ。
特にコーティング弦を張られている方からのお問い合わせが多い。
サビていなくとも下の画像の様に巻き弦のコーティングが剥がれたり解れたりしていれば
既に弦としての生命は終わっています。
この状態では正常に振幅しないので。
したがってこの弦で行うオクターブピッチ調整はざっくり大まかな仮調整です。

オクターブピッチの仮調整が終われば指板・フレットの研磨に入ります。
ピックガード外してピックアップ周り、ネック横、トグルスイッチ根元をマスキング。

細かい番手のスチールウールで上下方向=弦と同じ方向に研磨。

使用するスチールウールはボンスターの#0000。
ホームセンターなどでは見掛けない番手です。
手垢やホコリ、汚れの付着が酷い場合は#000で研磨してから#0000で仕上げます。

なんだ。ただスチールウールで擦るだけか。これなら自宅でも出来るよね?
と、お考えになるかもしれません。
しかし細かい鉄粉が飛び散りますので防塵マスク、その鉄粉を除去する為の
シューターが必要です。
そして何よりも鉄粉を撒き散らしても問題の無い環境が必要です。

研磨が終わると、

ピックアップには鉄粉が付着します。
ちなみに今回の鉄粉はかなり少ない方です。
この鉄粉を吹き飛ばすにはコンプレッサーを使用したシューターが必要。
パソコン掃除用の缶ダスター等では圧倒的に力不足です。

スチールウールでの研磨が終われば当て木にあてた銀磨きクロスでフレットを研磨、
そして指板用オイルを塗布します。

オイルの染み込み待ちの間にP-90を外してみる。
P-90の固定ビスのビス穴周辺が割れていたりビス穴が拡がっていたりが多いので。
レギュラーラインのP-90やP-100の場合はビス受けのアンカーが抜けている事も多いです。

ちなみにヒスコレP-90のカバーはビスの押さえ付ける圧力に負けているのか
元から成型が悪いのか横から見ると末広がり形状になっている。
ヒスコレはP-90底面とザグリ底面にスプリングを入れたりする様な余白は無いので
ぐいぐいビスを締め付けるとカバーにシワ寄せが来ます。
そしてそのカバー自体もレギュラーライン品に比べると肉厚が薄め。
カバーのビス穴周辺~ポールピース穴へかけて割れてしまっている物も珍しくありません。

指板の余剰オイルを拭き取ったらボディー全体のクリーニング。
今回は丁寧に扱われているギターなので汚れもほとんど見当たらず。
なので家具用ワックスクリーナーで十分です。
汚れが酷い場合は本気ワックスを使います。

ペグのギアボックス側面の油滲みが気になったので画像は無いですが
ペグ外してクリーニング。

別に今回の様なメンテナンスでなくともギアボックス固定ビスに緩みが無いかは
普段からチェックしてみて下さい。

今回は劣化はさほど酷くないものの、転ばぬ先の杖的に3本全てジャック交換。
プラグを刺して音の出る状態でプラグをグリグリ回転させて少しでもガリや接触不良が出るなら
交換をお勧めします。それほどにジャックのトラブルは多く、厄介な事に突然悪化する事も多いので。

ノブ外してポットの緩み締め込む。

あとは弦張って完成!
ではなく

ナットの溝の中の汚れを掃除します。
デリリンナットなのでナイロンに薄く入ったキズの中に汚れが入り込んでいて簡単には
取れないので溝を切り直す感じのクリーニングです。

このナット溝の汚れも弦交換の際にでもチェックしてみて下さい。
特に神経質になる必要はありませんが汚れが酷いと弦滑りに影響しますので。

お客様お持ち込みのエリクサーを張ります。

改めてロッド調整して

弦高調整。
12F上から弦までの実測で調整します。
事前にご希望の弦高のニュアンスをお聞きしますし、お引き取り時に試奏して頂いてから
最終調整します。
これにて56の作業は終了です。

お次は57。

この57はワイヤード=針金有りのABR-1なのでワイヤレスの様な苦労は不要?と
思いきや、ワイヤードはワイヤレスとは逆にサドルとブリッジにアソビがあるので
ビスとサドルの噛み具合が緩いと特定ポジションを弾いたら共振音が出ます。

なので噛み具合が緩いサドルは共振防止策を施します。
オクターブピッチを仮調整してサドルの位置が大体決まったらサドル前面、ビスの
根元にマジックで軽くマーキング。

え?マジックで??
と思われるでしょうが防止策の施工が終わればアセトンで拭き取ってしまうので
問題ありません。

サドルを外して分解。
ニッパーでサドルと噛み合う位置に僅かにキズを付けます。

ほんの一部のビスを軽く崩す感じです。

サドルを元に戻して終了。
この作業で一番難しいのはワイヤーの脱着だったりします。

今回はペグ本体の汚れ、ヘッド裏面の汚れをワックス使ってクリーニング。

最後にビス類の緩みチェック。
エンドピンやエスカッションビス、ジャックプレート、全てのビス類をチェックします。

ポットの緩みは

コントロールパネル開けてポット本体を押さえながら。

トグルスイッチナットも同じ様に裏側からトグルスイッチを押さえながら。

諸々調整して57完成!
一番時間が掛かるのは最終調整だったりしますけど。

ラストは59エイジドです。

この59もブリッジはワイヤレスなので
まずはオクターブの仮調整とサドルビスの曲がりチェックから。
特に酷い曲がりも無かったのでこの59はしっかりオクターブピッチ調整出来そうです。

ちなみにABR-1の高さ調整。
せり上げワッシャーを回して調整しますが硬くて回りにくい物も多いですよね。
ラジオペンチや工具類で挟んで回してワッシャー側面にキズを付けてしまった物も
よく見ます。

調整時は弦を緩める事も大切ではありますが少ししか回す必要の無い微調整の場合、
厚さ2ミリ程度のゴム板を

せり上げワッシャーに当てて押し回すと意外に簡単に回せます。
これでも回らない場合は潔く弦をユルユルまで緩めて調整しましょう。
決して何かしらの工具で挟み回さないで下さい。

さて、例の如くマスキングして指板&フレット研磨ですが、

エイジドやヴィンテージなどウェザーチェックが入っていて塗装が剥がれる可能性が
ある場合はマスキングテープを貼る前にズボンをペタペタして粘着力を落とします。
そこまでしてもヤバそうな塗面のギターの時はピックアップ外してしまう事も有ります。

ジャック交換。
2000年代前半以降の薄いジャックプレートはビスの締め付けトルクに要注意です。
強く締め付けるとジャックプレートの角が簡単に割れてしまいますので。
今回はお預かり時に既に1箇所割れてました。
プレイヤー指向が強く、実用性重視でこのジャックプレートが付いている場合は
見た目に拘らなければ金属製ジャックプレートへの交換をお勧めしています。

ポットも締め付けてボディーもクリーニングして…

ふと気になったのはピックアップ何かな?みたいな。
BB品番ステッカーが無かったので結局何か分かりませんでしたが

ピックアップカバーのハンダ付けが雑なのが気に入らない。
過去にピックアップカバーを外した事があるのかもしれませんね。
アプライドステッカーが剥がれているのはその時か?

なのでハンダ付けやり直しました。

59完成!
やっぱかっちょいいね!!

ようやくウィズコロナってこういう生活なのかな?なんて思える様にもなってきましたが
第7波なんて言葉も聞こえて来るのでまだまだ気は抜けませんね。

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