YAMAHA APX-10S エレアコを弦高低め仕様へモデファイする編
2022-10-01
最近何故かアコギの作業依頼が増えております。どうやらエレキ専門のリペア業者と思われている方も多い様なので、大変有り難い事です!
「アコギのリペアも受け付けてますか?」とか「ベースも調整出来ますか?」なんてお問い合わせを
頂きますが、全部やってます。
さて、今回はヤマハのAPX-10Sです。
ピンと来られる方もいらっしゃるでしょうが「とんぼ」の頃の長渕剛の愛用エレアコです。
コードストロークに向いた設計のエレアコですが、今回は弦高低め、アルペジオが楽に弾ける
仕様へモデファイします。

まずはフレットを打ち換え。
弦高低め狙いなので指板のストレート出しは重要。
きっちりクセを落とします。

この指板の摩耗具合。
かなり弾き込まれてきた歴史を感じます。
指板修正でも凹みは完全に消えませんが手触りが気にならない程度まで処理します。

さて、フレット打ちに入りますが…
最終2本のエクストラフレット、このサウンドホール側の処理がかなり大変。
予めグラインダーで斜めにカットしてから打つのですが…


指板エンド端に合わせた形状整形は手作業です。
かなり時間が掛かります。
普段よりこの類いのエクストラフレットが有っても工賃アップはしておりませんが
ぶっちゃけ毎回後悔しています(笑)
何でこんなに時間と手間掛かるのに工賃アップしなかったんだ?なんて。
で、しばらく同ケースが無ければ苦労を忘れてしまって普段通りのフレット交換見積もりを
答えてしまうと言う…

フレット打ち完了。
使用フレットはJESCAR #55090。
普段エレキでは多用しているフレットですが、太さは普通であるものの高さがあるので
今回の様な弦高低めを狙うアコギのフレットとしてもお勧めになります。

エクストラフレットのエッジ処理はこんな感じ。
画像では分かり難いですが、斜めの断面の端もきっちり面取り加工しております。
工場生産時はココはぶった切っただけみたいな処理ですが、きっちり仕上げないと
ギタークロスは引っ掛かるわ手でなぞるとかなり痛いので。

ここからは組み込み作業です。
ペナペナのバッテリースナップは既に電池差し込み金具の一部が破損しています。
なのでバッテリースナップごと信頼出来る物へ交換します。

実はこのバッテリースナップ交換が少々大変です。
プリアンプ本体を外さなければ作業出来ません。

ツマミ類4個の外周ナットを外し、丸ごと引き出します。
ここまでしないとバッテリースナップの根元に到達出来ないのです。

交換完了!

収納完了!
この辺りの設計は流石ヤマハって感じ。ちゃんと電池収納スペースが有る。
適当な絶縁袋に電池入れてマジックテープでペタッってな有りがちな電池固定ではない。

ようやく弦が張れるところまで来ました。
画像はありませんが無漂白牛骨で新規製作しているナットも弦溝は浅めです。
少しでも音の立ち上がりを速く、高域のロスを少なくしたいので。

ナットも仕上がってから弦高設定に入ります。
ブリッジサドル下にはピエゾPUが有り、その下には弦高調整用にスペーサーが2枚
入っていました。
もちろんスペーサー無しで可能な限り弦高を下げたいのですが…

このAPX-10Sは1~3弦、4~6弦を独立出力出来るステレオアウト仕様です。

なのでピエゾPUも1~3弦、4~6弦で別物になっています。
何が言いたいかと言えば3弦と4弦の間に両ピックアップの端が有り、弦のテンションが
掛かるとこの部分が沈み込む=サドル底面に接触する力が弱くなり、スペーサーを
全て除去すると結果として3弦4弦の音量がかなり下がってしまいます。
今回は薄い白のスペーサーのみを挟み込む事にしました。
厚み0.3ミリのアクリル板で薄いスペーサ-も作って試しましたが、0.3ミリでは
やはり3弦4弦の出力が低めだったので。

仕上がりの状況としては12F上で作業前よりも1弦側で0.5ミリ、6弦側で0.7ミリ
弦高が下がりました。
組み上がり時の弦高は1弦12Fで1.8ミリ、6弦12Fで2.5ミリです。
数値で見ればこの程度で低めなの?と思われるかもしれませんが、実際手に取ると
あ、弦高低くなってる!とオーナー様なら確実に気付ける程の違いです。

現代ではテイラー等、弦高低め前提で設計されたエレアコ、アコギも増えてはきておりますが
昔ながらのネック角が浅いアコギでは弦高を下げるのは容易ではありません。
フレットの山を高くして弦へ近付け、ブリッジサドル周辺を限界まで下げる設定変更程度しか
出来ませんが演奏性は明らかに変わります。
「昔このギターを買った時は歌いながらコード掻き鳴らす時代だったけど、今はゆっくり
アルペジオを爪弾きたいんだよね…」みたいにお考えの方は是非お問い合わせ下さい。
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