【臨時休業のお知らせ】
2022-10-31
下記日程にて臨時休業とさせて頂きます。3日(祝) 祝日定休
4日(金) 臨時休業
5日(土) 臨時休業
6日(日) 日曜定休
期間中のお問い合わせはメール、FBメッセンジャーでお願いします。
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YAMAHA APX-10S エレアコを弦高低め仕様へモデファイする編
2022-10-01
最近何故かアコギの作業依頼が増えております。どうやらエレキ専門のリペア業者と思われている方も多い様なので、大変有り難い事です!
「アコギのリペアも受け付けてますか?」とか「ベースも調整出来ますか?」なんてお問い合わせを
頂きますが、全部やってます。
さて、今回はヤマハのAPX-10Sです。
ピンと来られる方もいらっしゃるでしょうが「とんぼ」の頃の長渕剛の愛用エレアコです。
コードストロークに向いた設計のエレアコですが、今回は弦高低め、アルペジオが楽に弾ける
仕様へモデファイします。

まずはフレットを打ち換え。
弦高低め狙いなので指板のストレート出しは重要。
きっちりクセを落とします。

この指板の摩耗具合。
かなり弾き込まれてきた歴史を感じます。
指板修正でも凹みは完全に消えませんが手触りが気にならない程度まで処理します。

さて、フレット打ちに入りますが…
最終2本のエクストラフレット、このサウンドホール側の処理がかなり大変。
予めグラインダーで斜めにカットしてから打つのですが…


指板エンド端に合わせた形状整形は手作業です。
かなり時間が掛かります。
普段よりこの類いのエクストラフレットが有っても工賃アップはしておりませんが
ぶっちゃけ毎回後悔しています(笑)
何でこんなに時間と手間掛かるのに工賃アップしなかったんだ?なんて。
で、しばらく同ケースが無ければ苦労を忘れてしまって普段通りのフレット交換見積もりを
答えてしまうと言う…

フレット打ち完了。
使用フレットはJESCAR #55090。
普段エレキでは多用しているフレットですが、太さは普通であるものの高さがあるので
今回の様な弦高低めを狙うアコギのフレットとしてもお勧めになります。

エクストラフレットのエッジ処理はこんな感じ。
画像では分かり難いですが、斜めの断面の端もきっちり面取り加工しております。
工場生産時はココはぶった切っただけみたいな処理ですが、きっちり仕上げないと
ギタークロスは引っ掛かるわ手でなぞるとかなり痛いので。

ここからは組み込み作業です。
ペナペナのバッテリースナップは既に電池差し込み金具の一部が破損しています。
なのでバッテリースナップごと信頼出来る物へ交換します。

実はこのバッテリースナップ交換が少々大変です。
プリアンプ本体を外さなければ作業出来ません。

ツマミ類4個の外周ナットを外し、丸ごと引き出します。
ここまでしないとバッテリースナップの根元に到達出来ないのです。

交換完了!

収納完了!
この辺りの設計は流石ヤマハって感じ。ちゃんと電池収納スペースが有る。
適当な絶縁袋に電池入れてマジックテープでペタッってな有りがちな電池固定ではない。

ようやく弦が張れるところまで来ました。
画像はありませんが無漂白牛骨で新規製作しているナットも弦溝は浅めです。
少しでも音の立ち上がりを速く、高域のロスを少なくしたいので。

ナットも仕上がってから弦高設定に入ります。
ブリッジサドル下にはピエゾPUが有り、その下には弦高調整用にスペーサーが2枚
入っていました。
もちろんスペーサー無しで可能な限り弦高を下げたいのですが…

このAPX-10Sは1~3弦、4~6弦を独立出力出来るステレオアウト仕様です。

なのでピエゾPUも1~3弦、4~6弦で別物になっています。
何が言いたいかと言えば3弦と4弦の間に両ピックアップの端が有り、弦のテンションが
掛かるとこの部分が沈み込む=サドル底面に接触する力が弱くなり、スペーサーを
全て除去すると結果として3弦4弦の音量がかなり下がってしまいます。
今回は薄い白のスペーサーのみを挟み込む事にしました。
厚み0.3ミリのアクリル板で薄いスペーサ-も作って試しましたが、0.3ミリでは
やはり3弦4弦の出力が低めだったので。

仕上がりの状況としては12F上で作業前よりも1弦側で0.5ミリ、6弦側で0.7ミリ
弦高が下がりました。
組み上がり時の弦高は1弦12Fで1.8ミリ、6弦12Fで2.5ミリです。
数値で見ればこの程度で低めなの?と思われるかもしれませんが、実際手に取ると
あ、弦高低くなってる!とオーナー様なら確実に気付ける程の違いです。

現代ではテイラー等、弦高低め前提で設計されたエレアコ、アコギも増えてはきておりますが
昔ながらのネック角が浅いアコギでは弦高を下げるのは容易ではありません。
フレットの山を高くして弦へ近付け、ブリッジサドル周辺を限界まで下げる設定変更程度しか
出来ませんが演奏性は明らかに変わります。
「昔このギターを買った時は歌いながらコード掻き鳴らす時代だったけど、今はゆっくり
アルペジオを爪弾きたいんだよね…」みたいにお考えの方は是非お問い合わせ下さい。
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【シルバーウィーク期間の営業について】
2022-09-17
シルバーウィーク期間の営業は下記になります。18日(日) 日曜定休
19日(月) 祝日定休
20日(火) 通常営業
21火(水) 通常営業
22日(木) 定休日
23日(金) 祝日定休
24日(土) 臨時休業
25日(日) 日曜定休
期間中は営業日が少ないですが何卒ご了承下さい。
営業日以外にお問い合わせ、来店予約はメール、FBメッセンジャーでお願いします。
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ZODIAC オーダーTLスタイルを徹底的にレストアする編
2022-08-15
いや、本当に暑いですね…お盆休み終盤?ですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
当店は本日より通常営業です。
さて、今回はオーダー品?と思われるゾディアックのテレキャスター派生モデルを作業させて頂きました。

まずは今春に急逝されましたゾディアック社、松崎社長のご冥福をお祈り申し上げます。

後述しますがこのギターは94年製、ゾディアック社としては割と初期の頃の製品だと
思われます。
当時の電装系流行でもありましたがミッドブースト?の様な回路が内蔵されています。

元々は2V2Tのコントロールレイアウトの様ですがフロントトーンの位置へ
トグルスイッチが移設されています。

元トグルスイッチの場所は埋め木、そして他所と違和感の少ない部分塗装が施されているので
ゾディアック社で改造作業を行われたのかもしれませんね。

ブリッジはGOTOHの510FBの旧モデル。
スタッド頭が欠けているので現状でブリッジを正常にマウントする事が出来ません。
またスタッドアンカー周辺に塗装割れが見られます。
ブリッジ、テールピースは現行の510FB、FAに載せ替えます。


ピックアップもポールピースのサビ等の劣化が見られ、お客様の今後の演奏内容との
兼ね合いで交換します。
2ハムでは鉄板コンビのダンカン59&JBへ。

まずはフレット交換。
指板修正をきっちりと。

シュパーゼルのペグもギアグリスの滲み出しによる油汚れが目立つのでクリーニング。

フレット周り完成!
フレットはいつものJESCAR#55090。

そしてボディー側を着工。

全分解してから最初にブリッジのスタッドアンカー交換から着手。
画像の通り現行510FBのアンカーは太い。そしてスタッドも形状が異なる。

アンカー周辺のボディーにクラックが入っているので慎重にアンカーを抜く。

アンカー穴周辺はメイプルのトップ板が膨らんだせいか、表面は割れて起き上がり、
指で押すとパカパカ動く状態。
塗装割れが起きる事を覚悟のうえでアンカー穴から工具を差し込み浮いたメイプルを
少し持ち上げてから隙間にエポキシ樹脂を流し込む。
接着が終わってから周辺部のみ水研ぎとバフ掛け。
やはり塗装クラックが目立ってしまったが放置していずれアンカー周辺ののメイプルが広範囲で
剥がれ、修復困難な状況になるよりは不安要素無しに仕上げる為に必要な作業だったと思う。

新しいアンカー穴はトリマーで作業。

トグルスイッチ取り付け部もトリマーで穴開け。

フロントトーン部は埋め木。

画像左側が今回取付ける現行の510FB。右が旧型。
似てる様で結構形状は異なる。

アンカー埋めてボディー側の大きな作業は完了。

フロントトーンの埋め木はポット穴を開けてからタッチアップで黒に塗る。

配線完了。
CTSポットの安定供給はいつの日になる事やら…
ミッドブースト?回路のON/OFFスイッチはコイルタップスイッチとして使います。

コントロールパネル裏には94年の日付と松崎氏のサイン。
牛骨ナットで隠している部分にはオーダー主のお名前が。

今や入手困難な5Φのネックジョイントスクリュー黒。
取引の有るパーツ業者では取り扱いが無くなったので大先輩ギターエンジニアに
お願いして少量分けて頂きました。

順序が少し巻き戻しになりますがピックアップ。
純正を外した時には気付きませんでしたが…

あーエスカッション割れてんね…注文しなきゃ…みたいな感じで眺めてたら

リアは激レアのトムホームズH453リミテッドでした。
ポールピースにサビが出ていたり線材が短い状態ですが某オークションなどでは
かなりの金額になるのでは?

ちなみにトグルスイッチも耐久性、信頼性優先でミニトグルスイッチを選択。

ナットは無漂白牛骨。
元ナットはかなり黄ばんでいるが漂白の牛骨。
この頃は無漂白なんて無かったような記憶が。ブライアンセッツァーのグレッチに
油漬け牛骨ナットが付いてる!なんて機材紹介を見ましたがあれこそが無漂白ナットの
始まりだったのかも。

ナットが出来たのでブリッジサドルの弦溝切り。

この510FBブリッジ、ブリッジ自体の固定や精度はかなりしっかりしてますが
それ故に固定ビスが多く、スタッドを回すにも前後のイモネジを緩めなければ
なりません。

つまりスタッド高を調整すると必然的に全体のオクターブピッチ調整も必要になります。
もちろんサドルで個々のオクターブピッチも調整も可能なので調整範囲はかなり広い。
本音を言えばブリッジの設置位置が怪しいギブソンに付けたいところではある。


ようやく作業完了!
図らずとも鳴りがしっかり出ているのは当時の材料クオリティーの表れか、そして
ゾディアックの拘りと作り込みなのか。
末永く弾き込んで頂きたい1本に仕上がりました。

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夏期休業のお知らせ
2022-08-09
遅くなりましたがお盆期間休業のお知らせです。11日(木) 祝日定休
12日(金) 通常営業
13日(土) 休業
14日(日) 定休日
15日(月) 通常営業
12日、15日のご来店予約は早めにお願い致します。

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YAMAHA MG-Mゼブラ ディマジオPU移植とVLXレバースイッチ5WAY⇒3WAY化改造編
2022-07-30
久し振りにヤマハMG-Mでブログ更新です。密かに人気の高いMG-M。今でも年間数本は作業させて頂いております。
松本孝弘ファンだけではなく長時間弾いてても疲れにくいコンパクトなサイズ感が良いのではないでしょうか。
今回はご依頼頂いたMG-Mゼブラを素材にヤマハの3点止めピックアップの移植交換とVLXレバースイッチの
5WAY⇒3WAY化について書いてみます。

まずはフレット交換。
やはり古いギターなのでフレット交換が必要な個体は多いです。

まぁ今回の作業の難題はボディー側に集中しているわけですが。

取付けるピックアップはお客様お持ち込みのディマジオDP256、257。
ジョンペトモデルのイルミネイターです。
まだ付けた事の無いピックアップなので私も非常に楽しみです。

で、ヤマハで毎回頭を悩ます3点吊り下げ式ピックアップ。
ピックアップ交換の際は普通の2点止めエスカッションへエスカッションごと載せ替える事が
多いのですが今回はなるべくオリジナルのルックスを維持する方向性なのでディマジオを
3点止め化します。

フロントはボディー直止めなので元穴を埋め木して、新たに穴を開ければ済むのですが。

とりあえずフロントのビス穴を作業してから導電塗料塗布。
この段取りなら埋め木跡が隠せるので。

それではリアに取り掛かります。
ディマジオを3点化するのは難しいので純正ピックアップのシャーシーに
ディマジオを移植します。

幸いこのイルミネイターは裏面アジャスタブルポールピースの突き出し量が少ないので
Fスペースですが何とかなりそうです。

しかしながらボビンを固定している4本のビスの穴位置はざっくり並べて見ただけでも
合わないのが分かります。

まずはディマジオ分解。
サスティナー関係などでディマジオを分解する機会がありますが毎回メンディングテープを
剥がす一番最初の作業が一番緊張します。
画像で分かりますかね?右側フラットポールピースのボビン。テープの際にコイルが
見えています。コイル外周の銅箔テープではなくコイルなのです。
つまり雑にテープを剥がすと簡単に断線します。
ドライヤーで熱を与えながら慎重に剥がしていきます。
VAIがピックアップ横に養生テープ貼ってるのはココに弦が潜り込まない様に防護している
わけです。実際エヴォやブリードは出力が極端に下がった場合はコイル巻き終わり外周、
まさにボビンの上側際で断線している事が多いです。

純正共に分解完了。

アジャスタブルポールピース側の入る穴は何とかなりそうですが、やはり
ボビン固定ビスの穴位置の距離がヤマハは狭い。

棒ヤスリで穴を横方向へ拡げます。
ボール盤を使うと柔らかいブラス製シャーシーなのでビットが持って行かれる可能性が
高いので。ここは手作業が無難。

穴加工が終わったので仮載せ。
良い感じ!

と、喜んでいたらディマジオの出力線がシャーシーに通らない(笑)

ここは遠慮無くボール盤で穴拡大して完了。

組み上げたらロウ浸け。

これにてディマジオの移植作業完了です。

さて、今度はもう一つのお題。
レバースイッチです。
個人的には一番信頼している国産VLXレバースイッチですが、残念ながら3WAYが
廃盤となってしまった様です。5WAYは普通に入手可能なのですが。
薄々廃盤の気配を感じてからは各通販サイトの売れ残りや電気街の店頭在庫を買い漁りましたが
すぐに尽きてしまいました。
以降しばらくはエグい値上がりのCRLを使ったりしていましたが今回はスイッチ操作感も
しっかりとした感じに仕上げたいのでVLX一択です。
よって本腰入れて5WAYのVLXを3WAY化します。

まずは端子側プレートを外します。


ケースには5WAYと3WAY両方の溝があるので、

レバー基部の穴に入っているスプリングとボールベアリングを

3WAY側へ入れ替えれば簡単に3WAY化出来そうですが…

3WAY側の穴に対して5WAYのスプリングは細い。
そしてベアリングも小さい。
このまま仮組みしてみましたが使い物にはならない感じ。

なのでスプリングとベアリングを探しました。
スプリングは割と簡単に見付けられましたがベアリングはホームセンターをはじめ
金物屋を何軒も回りましたが中々見付からない。
結局アマゾンで買いました(笑)
画像上が5WAY用、下が今回用意した3WAY用です。

スプリング穴をグリスアップして、

玉載せ。

ケース側の3WAY溝にもグリス塗って

合体!!

端子プレートを嵌め込んで完成!
本来の3WAYよりは少し動作が硬めに感じますが十分使えるレベルです。
これで今後3WAYのVLXが必要になっても大丈夫。

スプリングは数本しか無いがベアリングはしばらく買わなくていいだろう。

スイッチ完成したらサクッと配線完了。

コントロールパネルには銅箔テープが貼られているが面取り部の処理が気に入らなかったので、

アルミで貼り直し。

電気系は仕上がったので今度はこれまたヤマハで毎回苦労するロッキンマジックの
メンテナンス。

何が苦労するって、分解したらこのパーツ点数よ。
本当にヤマハやアイバニーズって凄いメーカーだと思う。
この類いのオリジナルパーツはパーツ点数が増えれば増えるほどコストが跳ね上がるので。
余程の拘りと企業力が無ければ出来ない事だ。

ロッキンマジックで毎回必ず手を入れるのがファインチューナー用の小さなスプリング。
画像の様にサビが出ている事が多い。
本来ならスプリングを取り外してサビを完全に落としたいがスプリングが細くて挿入量が
深いので外すとスプリングがたわんだり曲がる。←経験済み(汗)
しかも外す際に気を付けなければぴよぉぉ~んと飛んで行けば即終了。
(以前外した時はサドルごとビニール袋の中に入れて作業した)
なので柔らかめの歯ブラシと先を潰した赤ちゃん綿棒で表面上のサビを除去するしか
出来ない。

組み込み調整も完了!
ピックアップ載せ替えやレバースイッチ改造で苦労しましたが、大きな収穫もありました。

ディマジオIlluminator、めっちゃ良いです!
トーンゾーンのブーミー?マッシー?なグシャッとした歪みがドライになった感じ。
それでいてパワー感も十分有る。
ジョンペトフォロワー以外でも試してみる価値はあると思います。
ただしディマジオあるあるで同モデルのフロント&リアなのにフロントは何故か
中低域がかなり太い。リアからフロントへスイッチするとドン!と来る。
それを緩和すべくフロントの高さを下げると旨味成分も減少する…
とは言え久し振りにディマジオで汎用性の高いピックアップに出会えた気がする。
難点は流通量が少ない事か。

猛暑、いや酷暑が続きますしオミクロンも厄介ですが皆様ご自愛されますように。
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MG-340X EMG SA&81 サスティナー基板の電解コンデンサーを全交換する編
2022-06-09
本当に久し振りにサスティナーカテゴリーでのブログ更新になります。まず最初に改めての告知になりますが、最近何故かサスティニアックステルス、ステルスプロの取り付けや
モデファイのお問い合わせが増えております。
当店で作業をお受けしているのはフェルナンデスのフルモードサスティナーのみになります。
サスティニアックはお取り扱いしておりませんのでご了承下さい。
また、フェルナンデスサスティナーキットは在庫切れ、次回入荷未定につき現在新規の取り付けは
お受け出来ない状況です。
さて、今回はMG-340Xの作業をご依頼頂きました。
340X表記ですしサスティナー基板の仕様からしても間違いなくホンジュラスマホガニー期のMGです。
お客様からよくお聞きするのですが最近フェルの国産モッキンの中古相場の値上がりが凄いですね…
某オクでもTEJとモッキンは販売時の定価超えが珍しくはないとか。
今回の340Xはプレイヤーズコンディションではありますがトップのメイプルもしっかり杢目が出ているので
今や貴重な1本なのかもしれませんね。
とりあえず電池を入れ替えてサスティナーをチェックしてみるも駆動ゲインがガクッと突然下がる時がある
ものの、とりあえずは動いています。

まぁ基板の設定でも見てみるか…と、コントロールパネルを開けてみると…
えっ??
思わず声出ちゃいました。
基板にサビが発生しています。

今まで様々な劣化したサスティナー基板を見てきましたが正直ここまでサビが出ている基板は
初めて見たかもしれない。
と言うかこれでよく動いたなってのが本音。
不安定な駆動ゲインもおそらくこのサビが原因でしょう。

半固定抵抗もこの通り。
どのみち交換するんですけどね。

サスティナー基板だけではなくトグルスイッチやサスティーンボリュームも泥?みたいな
付着物が凄い。特にボディーエンド側に症状が集中している。

ひょっとして水没したMGなのか?とも思いましたが今まで実際に水没したギターは
見てきております。
水没すると水分を含んだ木部が膨張して塗装が完全にクラッキングや剥がれてしまいます。
したがってこのMGは水没ではないのだろうとは思いますが、仮にバフ掛け時のワックスの
粘度が低く、コントロール内に侵入したとしてもサビは発生しないはずなのですが…

基板パーツ面。
エグいです…

普段出番は少ないものの効果は折り紙付きの工業用洗浄スプレーをぶっ掛けて
柔らかめの歯ブラシでやさしく擦ってみる。

気持ちマシにはなった程度…
この先の困難を覚悟したところでサスティナーは後回し。

まずは減ったフレットの交換です。
今まで見てきたスルーネックのMGにしてはクセは少ないですが、ロッドを締めると
やはり波打つのでしっかり指板修正します。

フレット打ち完了。

仕上げ完了。
使用フレットはJESCAR#55090です。

組み込みに入る前に全域をワックス掛け。
コントロールだけではなく表面のPUザグリにも例の汚れが…
でもこれは1弦側のみなのでバフ掛けの際のメンツェルナワックスかもしれない。

クリーニング完了。

今回はフロントのドライバー下ダミーPUカバーをEMG SAへ、リアは81で組みます。
つまりサスティナーOFF時のフロント出力はドライバーではなくSAになります。

いよいよこの時が来た。来てしまった。基板と向き合う時が。
まぁ初っ端はデカイの外すかとスイッチ2個外したら底面は…予想通り…

とりあえずスイッチと半固定抵抗、見た目にヤバそうな電解コンデンサーを交換してみる。

もちろんEMG仕様なのでアクティブ化の改造、駆動ゲインアップ化も行う。
で、本体に仮組みしてサスティナーの駆動チェック。
やっぱりねぇ…駆動ゲインが不安定。

心臓部のハイブリッドICはブラックボックス化の為にコーティングされているので
おそらく大丈夫だろう。そもそも心臓死んでたら動くわけないし。
と、なると原因は電解コンデンサーとプリとパワーのオペアンプか。

1個1個交換してはテストってのも面倒なので一気に全交換!
ただし今後使用しないフロントドライバーPU出力化のプリアンプ部は手を付けず。

何とか仕上がりました!
サスティナーが正常に作動する状況まで組んでからフロントのSA用の出力調整トリムを
追加。画像では100kΩを付けていますが最終的には50kΩで完成。

バッテリーボックス裏面までも…
クリーニングすれば問題無いパーツですが何となく気分的にモヤるので新品へ交換。
これは私のモヤが理由ですのでパーツ代金は当店負担です。つーか在庫有ったので。
結局コレは泥だったのか?コンパウンドの類だったのか?
最後まで結論は出ず。

ナットを無漂白牛骨で作ってセットアップして完成!

サスティナーはSA設置の影響でスタンダードモードの巻き弦で少し倍音被りぎみ、
何故かミックスモード立ち上がりが少し遅い。
そして更に何故か普段は駆動に苦労するハーモニクスモードがギンギンに動くと言う(笑)
このレイアウトは今まで何本も組んでますが思い起こせば全てロングスケールだったかも。
やはりミディアムスケールで同じ事をしてもロングスケールの様な結果にはならないですね。
毎回実際に組まないとどんな症状が出るか分からないのですが。

冒頭に書きましたがサスティナーキットは次回入荷未定です。
それゆえにサスティニアックのお問い合わせが増えているのでしょうけど。
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臨時休業のお知らせ
トレモロアップ止め最新アイテム! FU-TONE Brass Tremolo Stopper 編
2022-05-02
何の規制も無いゴールデンウィーク。皆様いかがお過ごしでしょうか?
当店は明日3日~5日はお休みとさせて頂きます。
さて、久々のトレモロアームアップ方向の動き止めネタです。
ピッチシフトキャビティー有りのギターにDチューナー搭載なら必須、
ルックスだけでフロイド要るけどアーム使わないしチューニング狂うのはイヤ…
そんなギタリストの救世主、遂に現るか?なニューアイテムをご紹介。

まぁ当店も今まで色々やってきました。
一時はトレモルノ付けまくりでしたがトレモルノもアルミ製ゆえに耐久性が…
で、こんな加工やって
http://tonegarage.blog52.fc2.com/blog-entry-411.htm
l試行錯誤するもやっぱり実績重視の加工に戻って
http://tonegarage.blog52.fc2.com/blog-entry-425.html
と、結局トレモロアップを止めるには太いイモネジに落ち着いていましたが。
今回はトレモルノからニューアイテムへの載せ替え編。

FU-TONE Brass Tremolo Stopper です!

まずはトレモルノを除去。

お客様のご希望でスプリング2本張りを試す…

が、スプリングハンガーを結構締め付けるもトレモロは水平にならず。

で、3本張って

トレモロ水平セッティングを詰める。

さて、ブラストレモロストッパーの出番です!
その名の通りブラス(真鍮)の金具に太めのイモネジがセットされている。
結局色々考えるもイモネジ作戦に落ち着くのか?
当店の検討と奮闘は上に貼った過去ブログをご覧下さい。

きっちり水平出しが終わったので真ん中のスプリングを移動させて設置位置を確保。

仮置きしてみる。
この画像をよく見れば分かるがブラスブロックの中心線とイモネジの中心は真っ直ぐではない。
やはりブラスの切削加工物にきっちり垂直なビス穴を開けるのは難しいか。

今までもイモネジで色々やってきたので、ここは今まで通り、
イモネジの先端の平面とサスティーンブロックをきっちり面で当てる事を
最重要課題とする。

ブラスの土台本体をボディーの中心に合わせるとイモネジは「点」でブロックに当たり
「面」では当たらない。
なのでイモネジの先端とブロック接触部の当たり具合で位置決め。

ビス穴2本開けて固定完了。
少しブロックが斜めってるのが分かりますかね?
最初このFU-TONE取付けのご依頼時にネットで検索してみたんですね。
するとスコットイアンやスラッシュのギターに付いている画像が出て来る。
その画像を見るとブラスのブロックがモロに斜めってるんですね。
あ~いつもの外人アルアル精度か。なんて思ってたのですがね。
斜める原因の全てが製品精度とは言わないが製品精度にも多分に責任は有るかと。

2本のビスで固定しますがイモネジ下の矢印で示したビスがトレモロアップのパワーを
受け止めています。
つまりこのビスを緩締めの状態でイモネジの先端とにらめっこしながら2本目のビス位置を
決めます。

イモネジを緩めればトレモロはフリーフローティング状態。

締め込んでサスティーンブロックに当てればアップ止め。

そして緩み止めの六角ナットを逆締めして固定。
実際はイモネジに正方向の締め付けトルクを掛けながら六角ナットを逆締めする。

精度云々を置いておいても当店が行っている様なサスティーンブロックをトレモロから
外して加工するよりは工程がラク。
ただし当店の加工例とデメリットは同じでした。
かなり強くピッキングしたり下の画像の様にブルルン!と弦全体を強く揺らすと…

ブラァァァン!と強烈な共振音が出ます。
トレモロが強いピッキングでクリケットする。するとイモネジとサスティーンブロックの
間が浮いたり設置したりで共振音が出ます。
また当然のごとくアームダウンからの復帰時もコンッ!と金属音が鳴ってしまいます。
六角ナットで固定が終わればトレモロスプリングを少し締め込む必要があります。
アームダウンのテンション感を確認しながらスプリングテンションを上げます。
まぁ色々書きましたがアームアップを止める確実な方法は今のところこの手法になるのでしょうね。

どっか金型起こして精度バッチリのこの類いのアイテム作らないかな?
もしくは精度の高い加工技術でステンレスで作るとか。

例年なら汗ばむ陽気にもなるゴールデンウィークですが今年は少し寒いぐらいですね。
一度気温の上がった時期も有った為か最近ネック反りのお問い合わせが増えております。
ブリッジで弦高の変更を行っていないのに最近弦高が変わったかも?みたいに
感じられておりましたら6日以降にお問い合わせ下さい。
トラスロッド調整はご予約のうえご来店頂ければその場ですぐに作業致します。
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音楽活動再開準備!ヒスコレ3本フルメンテナンス編
2022-04-16
まずはお知らせです。来週土曜日23日は臨時休業とさせて頂きます。ご了承下さい。
さて、最近ご依頼の増えているフルメンテナンス。
まん防も明けて音楽活動の再開に向けての準備ですね。
聞くところによればライブハウスのブッキングも混雑しているらしい。
一時はライブハウスが諸悪の根源みたいな扱いだったので嬉しく思います。
今回はバンド活動再開の為のフルメンテナンス。
ヒスコレの56、57、エイジド59の3本フルメンテ作業編です。
当店のフルメンテナンスはお問い合わせの多い人気リペアメニューですが、
どんな作業? どんな道具やケミカル使って何してんの? どこまで作業するの?
のご紹介です。
ジャック交換など一部フルメンテナンス基本工賃外の作業も含まれておりますのでご注意下さい。
基本的に3本同じメンテナンス内容ですが個々の特徴の有る内容のピックアップになります。

まずは56から。

お預かり時の弦の劣化が著しく酷くない場合は軽くロッド調整してから
オクターブピッチを確認します。
下の画像の1&2弦の様に明らかにオクターブ合ってないな…みたいな場合は尚更です。
これは最終セットアップ時に張る弦になるべくダメージを与えない為です。
最終張る弦がコーティング弦であれば確実に事前に仮調整しています。

この56のブリッジはワイヤレス(サドル押さえの針金の無い)ABR-1。
ワイヤレスABR-1の特徴としてサドル脱落防止の為にサドル取り付け部がかなりキツめ。
なのでオクターブ調整ビスを少し回すと…

サドルをブリッジへ圧入?しているのか
ビスが曲がってしまっているのでサドルごと浮き上がってきます。

サドル外して

ビスを抜くとこんな感じ。
しかしこの曲がりを無理に修正するのは御法度です。
簡単に折れてしまいますので。

ビス位置によってはサドルが浮き上がるのでワイヤレスABR-1のオクターブピッチ調整は
ある程度の妥協も必要だったりします。

ピッチがきっちり合った2弦ですが残念ながらこの位置ではサドルが浮き上がって
しまっています。
この場合は近い位置でサドルがしっかり嵌まる所で妥協するしかありません。

割と多いのが
「弦はまだ使える状態なのにオクターブピッチが合わない。ブリッジ・ナットの状態を
みてもらえますか?」なお問い合わせ。
特にコーティング弦を張られている方からのお問い合わせが多い。
サビていなくとも下の画像の様に巻き弦のコーティングが剥がれたり解れたりしていれば
既に弦としての生命は終わっています。
この状態では正常に振幅しないので。
したがってこの弦で行うオクターブピッチ調整はざっくり大まかな仮調整です。

オクターブピッチの仮調整が終われば指板・フレットの研磨に入ります。
ピックガード外してピックアップ周り、ネック横、トグルスイッチ根元をマスキング。

細かい番手のスチールウールで上下方向=弦と同じ方向に研磨。

使用するスチールウールはボンスターの#0000。
ホームセンターなどでは見掛けない番手です。
手垢やホコリ、汚れの付着が酷い場合は#000で研磨してから#0000で仕上げます。

なんだ。ただスチールウールで擦るだけか。これなら自宅でも出来るよね?
と、お考えになるかもしれません。
しかし細かい鉄粉が飛び散りますので防塵マスク、その鉄粉を除去する為の
シューターが必要です。
そして何よりも鉄粉を撒き散らしても問題の無い環境が必要です。

研磨が終わると、

ピックアップには鉄粉が付着します。
ちなみに今回の鉄粉はかなり少ない方です。
この鉄粉を吹き飛ばすにはコンプレッサーを使用したシューターが必要。
パソコン掃除用の缶ダスター等では圧倒的に力不足です。

スチールウールでの研磨が終われば当て木にあてた銀磨きクロスでフレットを研磨、
そして指板用オイルを塗布します。

オイルの染み込み待ちの間にP-90を外してみる。
P-90の固定ビスのビス穴周辺が割れていたりビス穴が拡がっていたりが多いので。
レギュラーラインのP-90やP-100の場合はビス受けのアンカーが抜けている事も多いです。

ちなみにヒスコレP-90のカバーはビスの押さえ付ける圧力に負けているのか
元から成型が悪いのか横から見ると末広がり形状になっている。
ヒスコレはP-90底面とザグリ底面にスプリングを入れたりする様な余白は無いので
ぐいぐいビスを締め付けるとカバーにシワ寄せが来ます。
そしてそのカバー自体もレギュラーライン品に比べると肉厚が薄め。
カバーのビス穴周辺~ポールピース穴へかけて割れてしまっている物も珍しくありません。

指板の余剰オイルを拭き取ったらボディー全体のクリーニング。
今回は丁寧に扱われているギターなので汚れもほとんど見当たらず。
なので家具用ワックスクリーナーで十分です。
汚れが酷い場合は本気ワックスを使います。

ペグのギアボックス側面の油滲みが気になったので画像は無いですが
ペグ外してクリーニング。

別に今回の様なメンテナンスでなくともギアボックス固定ビスに緩みが無いかは
普段からチェックしてみて下さい。

今回は劣化はさほど酷くないものの、転ばぬ先の杖的に3本全てジャック交換。
プラグを刺して音の出る状態でプラグをグリグリ回転させて少しでもガリや接触不良が出るなら
交換をお勧めします。それほどにジャックのトラブルは多く、厄介な事に突然悪化する事も多いので。

ノブ外してポットの緩み締め込む。

あとは弦張って完成!
ではなく

ナットの溝の中の汚れを掃除します。
デリリンナットなのでナイロンに薄く入ったキズの中に汚れが入り込んでいて簡単には
取れないので溝を切り直す感じのクリーニングです。

このナット溝の汚れも弦交換の際にでもチェックしてみて下さい。
特に神経質になる必要はありませんが汚れが酷いと弦滑りに影響しますので。

お客様お持ち込みのエリクサーを張ります。

改めてロッド調整して

弦高調整。
12F上から弦までの実測で調整します。
事前にご希望の弦高のニュアンスをお聞きしますし、お引き取り時に試奏して頂いてから
最終調整します。
これにて56の作業は終了です。

お次は57。

この57はワイヤード=針金有りのABR-1なのでワイヤレスの様な苦労は不要?と
思いきや、ワイヤードはワイヤレスとは逆にサドルとブリッジにアソビがあるので
ビスとサドルの噛み具合が緩いと特定ポジションを弾いたら共振音が出ます。

なので噛み具合が緩いサドルは共振防止策を施します。
オクターブピッチを仮調整してサドルの位置が大体決まったらサドル前面、ビスの
根元にマジックで軽くマーキング。

え?マジックで??
と思われるでしょうが防止策の施工が終わればアセトンで拭き取ってしまうので
問題ありません。

サドルを外して分解。
ニッパーでサドルと噛み合う位置に僅かにキズを付けます。

ほんの一部のビスを軽く崩す感じです。

サドルを元に戻して終了。
この作業で一番難しいのはワイヤーの脱着だったりします。

今回はペグ本体の汚れ、ヘッド裏面の汚れをワックス使ってクリーニング。

最後にビス類の緩みチェック。
エンドピンやエスカッションビス、ジャックプレート、全てのビス類をチェックします。

ポットの緩みは

コントロールパネル開けてポット本体を押さえながら。

トグルスイッチナットも同じ様に裏側からトグルスイッチを押さえながら。

諸々調整して57完成!
一番時間が掛かるのは最終調整だったりしますけど。

ラストは59エイジドです。

この59もブリッジはワイヤレスなので
まずはオクターブの仮調整とサドルビスの曲がりチェックから。
特に酷い曲がりも無かったのでこの59はしっかりオクターブピッチ調整出来そうです。

ちなみにABR-1の高さ調整。
せり上げワッシャーを回して調整しますが硬くて回りにくい物も多いですよね。
ラジオペンチや工具類で挟んで回してワッシャー側面にキズを付けてしまった物も
よく見ます。

調整時は弦を緩める事も大切ではありますが少ししか回す必要の無い微調整の場合、
厚さ2ミリ程度のゴム板を

せり上げワッシャーに当てて押し回すと意外に簡単に回せます。
これでも回らない場合は潔く弦をユルユルまで緩めて調整しましょう。
決して何かしらの工具で挟み回さないで下さい。

さて、例の如くマスキングして指板&フレット研磨ですが、

エイジドやヴィンテージなどウェザーチェックが入っていて塗装が剥がれる可能性が
ある場合はマスキングテープを貼る前にズボンをペタペタして粘着力を落とします。
そこまでしてもヤバそうな塗面のギターの時はピックアップ外してしまう事も有ります。

ジャック交換。
2000年代前半以降の薄いジャックプレートはビスの締め付けトルクに要注意です。
強く締め付けるとジャックプレートの角が簡単に割れてしまいますので。
今回はお預かり時に既に1箇所割れてました。
プレイヤー指向が強く、実用性重視でこのジャックプレートが付いている場合は
見た目に拘らなければ金属製ジャックプレートへの交換をお勧めしています。

ポットも締め付けてボディーもクリーニングして…

ふと気になったのはピックアップ何かな?みたいな。
BB品番ステッカーが無かったので結局何か分かりませんでしたが

ピックアップカバーのハンダ付けが雑なのが気に入らない。
過去にピックアップカバーを外した事があるのかもしれませんね。
アプライドステッカーが剥がれているのはその時か?

なのでハンダ付けやり直しました。

59完成!
やっぱかっちょいいね!!

ようやくウィズコロナってこういう生活なのかな?なんて思える様にもなってきましたが
第7波なんて言葉も聞こえて来るのでまだまだ気は抜けませんね。

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レアなOVATION製ソリッドギター、PREACHERを2本作業。工夫を凝らし、真面目に作られたヴィンテージでした編
2022-04-02
はじめにお知らせです。4月4日(月)は臨時休業とさせて頂きます。ご了承下さい。
さて、今回はオベーションのソリッドギター、PREACHERを2本作業させて頂きました。
画像上のサンバーストのポットデイトが77年、下のナチュラルが76年、エレアコの
イメージの強いオベーションとしてはモダンな感じですが今やヴィンテージギターの
カテゴリーになりますね。
ご依頼頂きましたお客様は以前よりサンバーストを所有、最近ナチュラルを買い足された
との事です。

まずはサンバーストの方から着工します。

ピックアップセレクターがピンタイプのトグルスイッチからミニトグルスイッチへ交換
されています。これまでにリペア歴有りとお聞きしております。

ボディー裏面のマイナスネジを外したら、

ブリッジが外れます。

ブリッジアースの線がクリップ式の留め具で固定されています。
この留め具を入れる事が出来るスペースが有ればしっかりとアースが取れる良い方法だと
思います。

まずはフレット交換から。
長年弾いてこられた様で結構減っています。

硬そうなエボニー指板だったのでフレットを抜く際に大きなチップが出ないか冷や汗
ダラダラでしたが、フレット近辺のみスチームを当てながら慎重に作業。
小さなチップもほとんど出ずに全フレットを抜く事が出来ました。

続いて指板修正作業。

指板修正に入る前にネックの詳細な状態を600ミリのスケール当ててチェックしていて
気付いたのですが、画像右側=6弦側の指板エンドが薄い。つまり6弦側の指エンドのみ
指板の跳ね上がりによるビビリ対策が施されています。
90年代のコンポーネント系で最終フレット付近の指板を意図的に落としているメーカーは
ありましたが70年代後半で既にこの様な工夫が施されていたのには驚きました。
「たまたまこのサンバーストだけの誤差なんじゃないの?」と思ってナチュラルの方を
確認したら同じ加工になっていました。
いわゆるヴィンテージとされる年代のギターでこの手法を取っているのは初めて見ました。

指板修正完了。縞黒檀ながら木目が細かいので良い艶に仕上がりました。

フレット打ち完了。
抜く時と同じでチップが出ないか不安でしたが無事打ち終えました。
ビビリな性格なので敢えて雨の湿度が少し高い日を選んで作業。

フレットエッジの処理、すり合わせも完了してフレット周りの作業は終了…
なのですが、ネックとしてはまだ終わりではありませんでした。

ネックジョイントに貼られた何かしらのラベルが塗装と固着してカリカリに乾燥しています。
基本的にデタッチャブルネックはネックとボディーの密着度が重要と考えているので
このまま組むのはちょっと気が引けます。

綿棒にステッカー剥がしを染み込ませて当ててみるも完全に硬化しているらしく
何の変化も起きない…

ならばと側面壁にマスキングテープを貼り、こぼれ対策をした上でガッツリとステッカー
剥がしを吹き付けるも残念ながら状況変わらず…

結局めちゃくちゃ時間は掛かりましたが水研ぎ+バフで仕上げました。

ジョイント面が仕上がって一息ついているとヘッド側面の打コンが気になり出す…
打コン周辺の塗膜が浮いているのでクロスや衣服が引っ掛かればペリッと剥ける
可能性が高い。

ヘッド表面には以前に作業されたと思われしタッチアップ跡が有る。

なので傷口の拡がり防止の意味合いでタッチアップ作業。
この薄い茶色はタッチアップ時に着色するとヘッド表面の様に逆に目立つ結果になりやすい
ので着色無しで作業。
指でなぞっても段差を感じないぐらいにしっかり仕上げました。

ようやくボディー側に着工。

まずはジョイント部から。
こちらは塗装の無い木部に直接ラベルが貼られているのでネックとは固着の状況がが少し違う。

綿棒で少し水分を落としてはドライヤーを弱く当てて2~3ミリずつ剥がす。
気が付けば1時間半掛かってしまったが何とか除去成功!

仕上げにオイルフィニッシュ用のオイルを少し染み込ませて完了。
フェンダーUSAはネックジョイントに製造工程のチェックシート?みたいなまぁまぁ
厚めのラベルを貼っているが何で貼るかねぇ…誰よりもデタッチャブルネックに関して
知っているはずのメーカーなのに。
とは言え自分もヴィンテージとして年代の推定や資料価値が有りそうなラベルは絶対に
剥がしませんが。

お次は電気系。
今や懐かしささえ感じるビタミンQコンデンサーや配線材がウエスタンエレクトリックで
チューンナップされている。

が、
ノイズ対策として貼られているアルミテープは堂々の重ね貼り。
重ね貼りすると粘着面で導通が途切れてしまうので意味が無い。

ピックガードを外したボディー表面も同様。
なのでアルミテープを剥がして導電塗料を塗ってしっかりノイズ対策を施します。

テープは剥がせどもねっちょり残った粘着面。

必要箇所にだけステッカー剥がしを染み込ませてちまちま剥がします。

導電塗料塗布完了。

コントロールパネル裏面にアルミテープが貼られているのでザグリと通電させるべく
ビス穴周辺に銅箔テープを貼り、導電塗料を塗って導通を確保しています。

次にストラップピンの位置を変更。
このサンバーストはカッタウェイ先端がオリジナル?かもですが数カ所に移設跡があり、
ストラップを掛けた際のバランス取りが難しい模様。
ギブソンのSGと同じ様なヘッド落ちかもしれませんね。

ナチュラルの方はジョイント部が純正状態の様です。
なのでサンバーストもこの位置への移設をお客様から希望されたのですが、製造年たった1年
の違いでストラップピンの位置仕様変更が行われたのでしょうか?

カッタウェイ先端の元穴は埋め木加工。

コントロールはボリュームポット2個が近年のロングシャフトに交換されていましたが、
少しガリも出ていたので2個共カスタムCTSへ交換。
線材もウエスタンエレクトリックは除去。
ステレオアウト仕様のダブルジャックですが、お客様はモノラルアウトしか使わないとの
事でしたので、ステレオアウト側はダミー化。
モノラルジャックはスイッチクラフトへ交換しました。

何故ウエスタンエレクトリックを除去したのか。
線材としては単芯の針金状で負荷抵抗も低く、高域特性は優れているので音質面だけで
なら良いケーブルだとは思います。

ですがハンダ付けする被膜を剥いた部分をラジオペンチで挟んで、

たった一往復曲げるだけで簡単に折れてしまいます。折れると言うかポロッと取れる感じ。
外装被膜が紙質ゆえに経年劣化で被膜内部にサビが出ている物も見た事があるので
高域特性は優れていますが個人的にはNGです。

最後に無漂白牛骨でナット作って完成!
ではありますが時間を掛けて弦高=ブリッジ高を詰めてプレイアビリティーと鳴りの
バランスが取れたポイントを探しました。

作業前はフレットが減っていたのもありますが生音の大きさ、音の拡がり、立ち上がりは
バッチリ向上出来たと思います。

さて、2本目のナチュラルに着工します。
こちらはセレクタースイッチも純正でオリジナル度が高いのでお客様と打ち合わせのうえ
ヴィンテージとしてのキャラクター重視でメンテナンスします。

まずはネックジョイントを外す。
こちらは何かしらの文章が読み取れます。

何が書いてあるかは分かりませんが資料価値が有るかもしれないのでこのままにします。

フレットもオリジナルでしたがやはり6弦指板エンドは薄くなっています。
真面目に頭使って楽器作りしてるなって感じ。

コントロールもフルオリジナル。
ですがお客様と相談の上でアルミテープを剥がして導電塗料を塗る事に。
ちなみにアルミテープですが、厚みがしっかりあるので環境によってはアンテナ化して
逆にノイズが増えたり高域が減衰するハイ落ちの原因になります。
かなり前にブログに書いたと記憶していますが、60年代仕様やヴィンテージのフェンダーで
ピックガードとボディーの間にピックガードと同型の薄いブリキ質の板が挟まれていますが、
あの1枚を抜くと少しトレブルが強調されます。

ポット類外して休憩中に何気にパネルを載せてみる。
落とし込みザグリとパネルに無駄な隙間が無い。
ある意味日本人的な作り込みを感じる。

そしてまたまた粘着面剥がし。
ステッカー剥がしを染み込ませてはプラスチックのヘラでキズを入れない様に
少しづつちまちま剥がす。

このプラスチックのヘラ、ステッカー剥がしを買うと1枚だけ付いてくるが耐久性は無い。
なので普段は先の曲がったヘラを削って再生したりピックガードの端材でヘラを自作したり
していたが、何と近所のホームセンターでヘラだけの販売を発見!
見付けた時は思わず「おっ!」って声出たわ(笑)

剥がし終えたので導電塗料を。
今回もコントロールザグリとパネル裏面は銅箔テープで導通を繋ぎます。

テープ貼ってから、塗る。


電気系を元通り組んでステレオジャックを無効化、モノジャックのみ交換してから
一通りのフルメンテナンス作業、そしてセッティング。
トラスロッドカバーが交換されている様で、ビス穴が複数空いていたので不要なビス穴を
埋め木。

ようやく2本共に完成。

70年代後半でオベーションでありながらソリッドギター。
見る人によってはビザール系と捉えるのかもしれない。
しかしながらその作り込みは実に真面目で工夫に富んだギターでした。
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ジャパンビンテージレストア!VOL.2 Navigator by ESP LHストラト編
2022-03-05
さて、ジャパンビンテージレストア2本立ての2本目はナビゲイターの左利き用ストラトです。今も昔も左利きのプレイヤーはギター選びが難しく、欲しいギターに左利き用が
ラインナップされていなかったりされていても生産本数が極端に少ないので入手困難だったりと
皆さんかなり苦労されてきております。
今回のストラトも当時オーダーで製作されたらしく、買い換えるにも左用の選択肢は狭く、
ましてや国産となればより一層、新品・中古問わずとも難しい状況なのでレストア受注となりました。

このロゴサイズ、形状からしておそらくはナビゲイターでも初期の頃では?と思います。
自分がギターキッズだった当時、シェルドンギターズに入り浸っていたのを思い出します。
その頃より隙有ればオーダーを勧めてくる商法は今のビッグボスでも健在みたいですが(笑)

それでは早速着工。
何十年と弾き続けられてきただけあってフレットは激減りです。
弦直下の凹み減りはもちろんの事、ハイフレットもかなりぺったんこです。

ペグもかなり劣化しており、外見だけではなく回転トルクもかなり重ためです。

ギター全体の年齢の重ね方に比例した金属パーツのやつれた質感の空間にピカピカ新品の
ペグが付くと違和感しか無いのでペグ一式を外して徹底的にメンテナンスする事を決意。
決意とは言いつつその時が訪れたら溜め息出るんやろなぁ…と。

早速ネックを外すもネックジョイントスクリューの根元が完全にサビている。
お持ち込み時にトラスロッド機能チェックで初めてこのビスのサビを見た時には
「あ~普通にビス外せて良かった~今日なんかツイてるんちゃう?」てのが本音。
と、言うのもこの手のサビはビスを緩めようとした瞬間に頭だけがポロッと取れて
ビス本体は木部に残る事が珍しくないので。
ラッキーを感じた反面、ジョイントビスがここまで茶サビに浸食されているなら
他のビスは…と新たな緊張感を感じた。

無事にネックは外せました。

トラスロッド調整部にはメンツェルナワックスが固着していてロッド調整がかなり硬い。
この後も頻繁に触る場所なので先に手を入れようかと。

ビュレット抜き出して内部を清掃。ビュレットも研磨。
グリスアップしたら普通の力でロッドは回せる様になりました。

ペグを外す。

ペグブッシュも抜き取る。

フレット抜いてまずは指板修正から。
問題となる様なクセは見当たらないのが救いでした。なぜなら…

ラウンド貼りの指板がめっちゃ薄い!
つまり指板修正での削りしろが少な過ぎるから。
必要最低限の指板修正にとどめるつもりもハイフレットは少しハネ上がっているので
削らざるを得ない。

ハイフレットの修正時には可能な限り無駄な力を入れず、数回治具を動かしては
スケール当ててキャンドリング。
「頼む!これでストレート出てくれ!もう削らなくて良いと言ってくれ!」みたいな
訳の分からない独り言を呟きながら何とか指板修正完了。
しっかりした金筋=木目からも分かりますが硬めで油分も少ない上質なローズ指板でした。

時は進みフレットを打ち終わり、フレットすり合わせに入る。
年明け頃にDIY派の常連様にフレットエッジの面取りの方法を聞かれたので載せてみる。
すり合わせの研磨、中目に入ったあたりでエッジの面取りを行っています。
中目の段階で作業すれば面取りによる切削痕もその後の研磨で消せるので。
刃のへたった極細目の金属ヤスリで手首のスナップを効かせつつ「力を入れずに」
フレットエッジをなぞる様に削ります。
削り具合は見た目ではなく手に伝わる感触で判断。不思議と視覚に頼って整形しながら
削るよりも手に伝わるジョリジョリ感を均一にするイメージで面取りした方が綺麗に
仕上がります。←書いてて自分でも何言ってんだかよく分からないが(笑)

仕上がり時までにはかなり研磨する=面取り面が摩耗するのでこれで結構削った感じです。

フレット根元の傘の際の部分は極細目の目立てヤスリにて。
これも力を入れずにフレット根元の直線部からエッジの根元にかけて這わす感じで。
うん。これではたぶん何も伝わらないな。T様、また連絡下さい(笑)

面取り完了。
研磨も完了。

弦落ちを防ぐべくフレットの耳は立てぎみで仕上げるのでエッジの面取りは
演奏時、ポジションチェンジの手触りで感触を左右する重要な要素になります。
ごく稀に弦を張って最終調整まで進んでから「んん…もうちょいだな。あと本当ちょいだな。」と
面取り作業をやり直す事もあります。完全に自己満足の世界かもですが…。

これもよく聞かれる。
「指板に塗るオイルって何使ってますか?」
以前もブログに載せた事がありますが大昔からフェルナンデスの424です。
別に高いオイルではありませんがローズネックオイルと言うだけあって指板が
良い感じに染まります。オイルの粘度も丁度良く、流れすぎずにしっかり導管に
残る感じ。

ネック側の作業終了。
フレット磨いたり指板にオイル入れてる時には少しだけ憂鬱になる。
そう。これが終わればペグ研磨が待っている。
タイムリーな表現をするなら
「あー今日仕事終わったらワクチン接種なんよなぁ…って事は明日は熱出るんよねぇ…」
みたいな近い未来の確定された不幸を迎える不安から来る憂鬱感(笑)

でもヤルでぇ~~!
完全にザラつきが出たペグ表面は強めに研磨確定としてもクルーソンは形状からして
細かい箇所にワイヤーブラシが入りにくいので本当は小回りの効く細目のスチールウールで
ゴシゴシやりたいところだ。
しかしギア内部への注油口が開いているのでギア内部に鉄粉を入れるわけにはいかない。
画像は撮り忘れましたがホームセンターに出掛けて大きめの歯ブラシぐらいの小型で
毛先が柔らかいワイヤーブラシを購入、木工用ヤスリやボール盤のサビを磨いて良い感じに
へたらせてからペグ研磨に投入。

右が研磨済み。
画像では分かり難いですが目立つ傷も入らずにザラつきやサビを除去出来ました。

6個研磨して取付け。

もちろんブッシュも研磨。
組み付け時にはブッシュ内面とペグシャフト接触部にのみペースト状のシリコングリスを
薄く塗布。ギアボックスには注油口より粘度高めのスプレーグリスを注入。
ペグの手触り、回転トルク共にかなり改善出来ました!
ロトマチックではないので個別の回転トルク調整は出来ませんが実用上問題となる
硬さが残る場合は注油してからワインダーで100回ほど空回ししてグリスの馴染みを
促進させる事もあります。
画像では付いてませんがテンションガイドもきっちり研磨済みです。

ようやくボディー側着工です。

フロント&センターは珍しいダンカンのカバードタイプ。
中身はスタックコイルのハムバッキングでした。
興味が出たので後の組み上げ時にフロントだけサウンドチェックしました。
バーチャルビンテージやFURYに慣れた耳にはかなり中域寄りに感じられました。
やっぱハムはハムでしたわ(笑)

そして蘇る緊張感。
もしお手持ちのギター、ベースでドライバーや六角レンチ差し込み口が崩れかけている
ほどにサビが出ているなら外す際は慎重にお願いします。

ご自分で外すのが怖い場合はご相談下さい。

「あのー錆びたビスを外そうとしたら頭だけポロッと取れてビスは木部に残ったので
リペアお願い出来ますか?」とお問い合わせ頂く前に
「サビてて外すのがヤバそうなビスがあるのですが見てもらえますか?」的な
お問い合わせを頂く方がまだ救われます。誰が救われる?←私が。(笑)
お客様が折ったビスは「あーあー仕方ないな…」なテンションで作業になりますが
私がビスの頭を飛ばしたなら「仕方ない。直すゼ!」と開き直って新たなアゲテンションで
作業に当たれますので(笑)
つまりサビで折れるビスはどんな外し方をしても折れる時は本当に簡単に折れます。

前置きが長くなりましたが冷や汗かきながらピックガード外しました。

トレモロも外してボディー研磨に入るゼ!ってな所で、

表側からは「軽く研磨するかな?」程度に見えたエンドピンは

ビスの根元が激サビでした。
この頃にはサビ耐性が出来上がっていて「あ、やっぱりね。サビてるね。」なテンション。
エンドピン一式交換確定の瞬間でした。

さて、今回はポット類、レバースイッチはもちろんですが、ピックアップも載せ替えます。
抜群の安定感を持ったロングセラーでド定番、ダンカンSSL-1を3発です。
当然レフティーモデルでセンターは逆磁逆巻きのRWRP。
やはりハーフトーン時のハムノイズキャンセルは便利ですので。
ちなみにこの組み合わせ、センター+リアのハーフトーンでは良い感じの色気が有ります。
カッティングでもフレージングでも気持ちいいザ・シングルコイルサウンドが楽しめます。

ド定番にはド定番なりの理由がありますのでストラト弾きの方で最近ヴィンテージ路線の
高域寄りサウンドに飽きてきた方は是非お試しを。

シングルコイルのマウントには付属のゴムチューブは使いません。
ヴィンテージ模倣コンセプトの作業時以外はスプリングを使います。
理由は画像左端の純正ゴムの成りの果ての通り、ゴムチューブは加水分解でいずれ
カッチカチになって反発力ゼロになってしまうのが分かっているので。

今回のノブ類はローレット付きなのでミリ規格シャフトしか使えません。

したがってミリ規格シャフトのカスタムCTSを使います。
回転トルクが元のポットよりかなり硬めなので分解してグリスを入れ替え、
スムーズポット化して回転トルクを軽めに改造します。
前から気になってますが表記はカスタムCTSのミリ規格シャフト品、コレたぶん
カスタムCTSやなくて普通のCTSやと思う…
カスタムCTSよりキャップ部分が明らかに薄くて柔らかいんですよ、
ベースプレートの質も違う。

配線完了!!

上から見たらこんな感じですが、

はい、ポット間アースは側面でしっかり取ってますよ~!

新品エンドピンをフエルトワッシャー挟んで取付けて

ボディー側完成。

実は配線作業してる時には既に例の憂鬱感に包まれておりました…
憂鬱感第二弾は「たぶん簡単には取れないぞサビサビイモネジ付きトレモロ」
の研磨作業です。

はい。普通に取れたイモネジは12本中4本だけでした。

残りはバイスにサドル固定して食い切りで回し引き抜きます。
このサビきったイモネジは再利用しないので遠慮は要りませんが食い切りを強く
握り過ぎるとイモネジ自体を折り切ってしまうので力加減が難しい。

意外にすんなり抜けて一安心です。
この作業が最も大変なのは取付けビスがオフセットしたフェンダーのアメスタです。
アメスタはイモネジとサドル内面が両方とも強烈にサビて固着するので油を差そうが
ワイヤーブラシでサビをある程度除去しようが毎回苦労します。
完全固着アメスタに比べれば今回は楽勝でした。

ついでにサスティーンブロックまでも分解。
断面の色を見ても分かりますがブラス(真鍮)ブロックでした。
こういう所、ジャパンビンテージは本当に真面目に作ってるなと感じます。

ベースプレート裏面のサビや汚れはワイヤーブラシでササッとクリーニング。

サドルの弦穴は綿棒をプライヤーで潰して掃除。

研磨・組み込み完了。

新たに取付けたイモネジ、サドル固定ビスはステンレス製です。

トレモロスプリング、スプリングハンガー、ハンガー固定ビスも新調。

ネックジョイントプレートの裏面はワイヤーブラシで研磨、クッションプレート内面には
青サビが固着していたのでクッションプレートは新品へ交換します。

なんかチタンみたいな質感。良い感じのくすみ具合です。
さり気ない主張の小さなESP刻印。

ナット製作してセットアップ。
左利き用は毎回ナット製作での溝切り微調整が難しい。

完成!
弦高セッティングは感覚ではなく12F上で弦との距離を実測で調整、細かいニュアンスは
お客様に試奏して頂いてからご希望に沿って微調整します。
普段からも数値である程度の弦高を調整してから自分で弾きながら感覚での微調整を追加、
お客様引き取り時に試奏して頂きながら最終調整ですが左用は自分の感覚での微調整が
難しいので。

これも毎度の事なのですが、外したパーツ類は全て返却しております。
おそらく今後使い道は無いので処分される方も多いとは思いますが
ギターと共に長い時間を過ごしてきたパーツ類なので邪魔にならないなら
保管される事をお勧めしたいところではあります。

ここまでブログ2本に渡り長々と書きまくってきましたが、お付き合い頂き有難う御座いました。
また明日から新たなレストア作業に着工致します。
とは言えですね、またもや憂鬱感に包まれているんですよ…
次のレストアが大変だから? いえ、違います。
まだね、何も手を付けていないんですよ…
確 定 申 告 。
もう期限まで一週間無いし(汗)
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ジャパンビンテージレストア!VOL.1 日本製スクワイヤーストラト編
2022-03-05
久々のブログ更新になります。相変わらずレストア作業が多く、忙しくさせて頂いております。
作業をご依頼頂いたお客様の皆様に感謝しております。
さて、今回はジャパンビンテージのストラト2本でブログ更新を考えておりましたが
画像を整理したところ、2本で100枚ぐらいになりましたので(笑)、画像大量長編を
読んで頂くのも疲れるだろうと思いますのでVOL1、2の2本立てにします。
まず前編は日本製スクワイヤーのストラトです。
アラフィフ世代は「あ~~有った有った、懐かしい~」でしょうけど
今やスクワイヤーに日本製が存在した事を知らない世代も多いかと。
要はフェンジャパの廉価版に位置付けされますが多少のパーツグレードダウン程度で
実質生産元もフェンジャパと変わりません。

ナット交換でご来店頂きましたが…

フレットの摩耗をご指摘させて頂きました。
今後も弾き続けるとの事で相談の結果、フルレストアをご依頼頂きました。

ペグはゴトー製のロトマチック、今やラインナップ落ちしてしまったSGシリーズの
廉価版、SGEです。
正直SGシリーズと大きな性能差を感じた事はありません。
ネックグリップのハゲ具合が激シブです。

ボディー側もピックガードビスが何故かゴールドだったりサビが結構出ていたりで
手を入れる箇所は多そうです。

まずはフレット抜いて指板修正、フレット打ち。
多少ネジレ傾向のあるネックでしたが木材自体は指板修正で削ってもあまり動かずに
落ち着いていたのでさほど苦労はしませんでした。
フレット打ち終わって一段落。
指板修正~フレット打ちは毎回くどく書いているので割愛です。
逆に今回はいつもはサラッと書き逃げている内容をネチネチと書いてみようかと。
最近常連様のDIY派からご質問頂く内容も散りばめますので電話やメール返信で
ご説明内容が分かり難かった内容も参考にして頂ければ。

さて、レストア作業には付き物の金属パーツ研磨。
ロトマチックのペグ編です。
各ペグに元弦のマーキングをしているのは元に戻す際に同じ弦に戻す為。
オーナー様なら○弦のツマミにはキズが入っていて○弦は回転トルクが他より軽くて…
みたいな長年馴染んだ使用感があるじゃないですか。それを変えない為のマーキングです。

まぁ何十年も使っていればサビやギアボックスからの油染みが出ていて当たり前。

クリーニングや研磨作業でこんな感じに仕上げます。

で、どうクリーニングしてるかですが、
ギアボックス周辺によく見られる油染みに汚れが付着して固着、油成分自体も酸化して
固まっているので普通に乾拭きではあまり取れません。酷い場合はベタつきも出ています。
ベタつきがあると拭上げるクロス類が引っ掛かります。
かと言ってサビでも無いので不要にキズを入れるワイヤーブラシや研磨素材までは使う必要が無い。

そんな時はパーツクリーナーやブレーキクリーナーをウエスやペーパーに吹き掛けて、

軽く拭上げればスッキリと。クリーナーが固着した油分を溶かして柔らかくしてくれるので。
「何だ、それなら丸ごとパーツクリーナーを吹き掛ければ良いのでは?」と思われるかも
しれませんね。
2弦マーキングしたツマミの根元を見て下さい。
白のナイロンワッシャーが見えますね。
この長年生き長らえてきたワッシャーにケミカル類をブッ掛けると突然糸が切れる様に
ワッシャーが破断する事があります。しかもワッシャーのみの単体販売等は無い。
なので必要な箇所のみをクリーニング、磨き上げします。

一転、ワッシャーや六角ナットのネジ部にサビが出ている場合は、

容赦なくワイヤーブラシでゴシります。
ただし使用しているワイヤーブラシは毛が柔らかめ、しかもメンテがてら金ヤスリを
磨き倒して毛先がかなりへたった状態の物を敢えて使っています。
新品の柔らかめのブラシ毛でもメッキのかかった金属パーツを磨けばそれなりにキズが
入るので普通なら買い換え推奨ぐらいにへたった毛先のブラシを重宝しています。

クリーニングと研磨が終われば組み上げて、

上で「作業前のペグ使用感を変えたくない」とは書いていますが明らかにツマミが
グラグラするほどトルクが弱かったり逆にワッシャーが千切れそうな程に回転トルクが
硬い場合は調整します。
今回も2個ほど調整しました。なるべくは全弦同じ様なトルクでペグが回ればベストですね。
ちなみにGOTOHの新品ロトマチックペグを取付ける際は全弦トルクを緩めています。
GOTOHの出荷状態では回転トルクが硬めなので使用感とワッシャー保護の意味合いで。

これにてネック側の作業完了。
ナットはボディー側が仕上がった状態=音が出る状態になってから製作します。

それではボディー側を着工。

まずは全分解です。

ピックアップは裏面にフェライトマグネットが貼られたタイプ。
大昔はイシバシ楽器の中古パーツコーナーでよく見掛けたものだ。←遠い目…
このフェライトマグネットが貼られたシングルコイルはポールピースがアルニコで
ポールピース自体がマグネットの一般的なシングルコイルとは違い、ポールピースは
磁力を持たない鉄芯です。
サウンド的にはやや中域がファットな感じで大昔は「高域が丸い」だの「ヌケが悪い」だの
評価はイマイチでしたが近年当店のストラト愛好家の一部ではわざわざこのタイプを入手して
それこそカスタムショップ製に取付けたりしています。
理由は音作り機器の著しい進化で比較的簡単にサウンドキャラクターを高い次元で変える事が
出来る様になったのでピックアップ自体のキャラ依存度が下がりつつある事、
そしてこれこそがこのタイプのピックアップの「強み」なのですがマグネット自体が弦から
遠いので「ピックアップの磁力が弦を引っ張りにくい」のです。
つまりオクターブピッチの調整などで巻き弦の12F付近の実音で「みょわんみょわん」な
音揺れが出にくい。当然サスティーンにも影響します。
ハムバッキングの載ったギターとポールピース自体が磁力を持ったシングルコイル搭載ギターで
オクターブ取ってもらえれば何が言いたいかはすぐお分かり頂けるかと。
ちなみに普通のシングルコイルでオクターブ取る時はポールピースの磁力の強さにもよりますが
ピックアップは実用域よりもかなり下げます。ピックガードすれすれまで下げる事もあります。
結論から言えばポールピースの磁力が強いシングルコイル搭載ギターは実用セッティングの
ピックアップ高では正確なオクターブピッチ調整が出来ません。
その点今回のセットアップ時のオクターブピッチ調整は何ら苦労する事はありませんでした。

電装系はΦ16ポットにYM-50レバースイッチで当時物フェンジャパのお約束。
CRLを模したオープンタイプのDM-50から始まるレバースイッチ接触不良祭りは
ケーシングタイプのYMに置き換わって一段落した?かの様に見えたがYMも中々に
接触不良が多い。結果確実に改善される国産レバースイッチはVLXのみになるが
近年VLXの3段は廃版?のようである。5段が健在なのは一安心なれど3段は
値上がりしまくりのCRLかOAKしか選択肢が無くなったのはスイッチ代金を
負担するユーザーにとっては大問題…
VLXの3段の復活を強く願う。
ちなみに近年の日本製フェンダーにはもっと残念な大陸製基板タイプスイッチが
使われていますが接触不良具合がDM、YMより少しマシ。でも耐久性が残念…
そうそう、ポット類ももちろんCTSに変えますよ。

清掃がてらピックアップカバーを外すと…
フレット研磨時に使用した?と思われしスチールウールが大量に付着している。
これは今後サビに発展してコイルにダメージを与える可能性が高いので全て除去する。
爪楊枝の先に粘着力の弱い両面テープを巻き付けてコイルのダメージを与えない様に
慎重に慎重にスチールウールをペタペタ取り除くが、あまりに慎重に作業し過ぎて
画像を撮るのを忘れました。

カスタムCTSとVLX5段で配線完了。
このストラトのノブ類は軸の入る箇所にローレット=ギザギザの無いインチ・ミリ共用タイプ
だったのでインチ軸のカスタムCTSを使用。
ローレット有り=完全ミリ規格の場合はミリ規格シャフトCTSを使います。

で、ちょっと古いブログを見て頂いたお客様から
「ピックガードに導通シート貼ってる場合はポット間のアース取らないんですね」と
言われましたが、取ります!絶対取ります!!確実に取ります!!!
ポットが緩んだりすると導通シートとポットの接触が怪しくなりますし。
何でそんな風に解釈されたかと言えばポット間アースをポット側面で繋げているから。
真上からアッセン画像撮るとアース線が見えにくい。
普通にポットの背中同士を結べば良いのだけれどボリュームなんかはピックアップの
アースやブリッジアース、ジャックへの出力アースを落とすので、なるべくは省スペースに
したいし後は見た目(笑) 個人的に勝手にアース線が目に入りにくい方がキレイに見える?
なんて思い込んでるだけ。

ピックガード周りが仕上がったので次!
トレモロスプリングは経年劣化で伸びているので当然交換します。

トレモロ一式を外してボディー研磨!

研磨&ワックス掛け!

エンドピン(ストラップピン)もかなりキテるので問答無用でワイヤーブラシで
ゴシゴシする。

そりゃサビは落ちますが、

ビスの傘裏に残った青サビ。
これが実は結構曲者でして、青サビは何かしらのガスが出る?のか密閉された空間、
つまりケースに入れっぱなしにしてると他の金属パーツに飛び火する事があります。

ストラップピン本体側の青サビは結構取れたので継続使用、ビスは新品へ交換のうえ
クッション材フエルトを挟み込んで取付け。

トレモロスプリングを新品へ交換したらスプリングハンガーとビスがくすんでいるのが
許せなくなったのでハンガーとビスも交換。
毎回この類いで頭を過ぎるのが
お客様はここまで望むだろうか?ここまで気にするのか?」って事。
考えている内に「じゃあ自分ならどう思う?」って結論になる。
なので交換する。
作業してる自分が「ここまでやれば納得出来るかな」って所までやりきれば
おそらくお客様も納得してもらえるだろうし。

ツッコミ対策で載せておきます。
ブリッジアースもきっちり取ってます(笑)
スプリングに干渉せず、トレモロバックパネルを外した状態で弾いても衣服に
引っ掛からない様に。

ピックガード側と合体。

ボディー側完成!

ナット製作!
全体のセットアップ開始!

オクターブを取ってから弦高調整に入る。
弦高調整用のイモネジはステンレス製へ交換済み。

トレモロのクリーニング・研磨後の組み付けではとりあえず純正と同じ8~10ミリ長の
イモネジで組むが弦高調整後は不要なイモネジの突き出しが気になる。
特に6弦近辺はブリッジミュート時に手に当たって不快。

ミリ規格のこのイモネジは長さが2ミリ単位=6・8・10ミリのバリエーションなので
どうしてもサドル上面きっちり面位置は無理。
そんな時は手に当たる不快感のリスクより調整幅のマージンを優先しています。
短いイモネジがサドルにめり込んでまで弦高を上げて、空いたビス穴、つまりサドルの
ビス穴の内部でサビが発生したら発見は遅れるしサビを取るのも大変なので。
大体標準とされている弦高よりは低めに組む事が多いので引き取り時にお客様に試奏
チェックして頂いて最終調整を行っていますが、時間を掛けて弾く事で好みのセッティング
が変わった=もう少し弦高を上げたいとなってもサドル内サビを防ぐべく。

で、オクターブピッチ調整時にずっと気になっていたサドル固定ビス=オクターブ調整時に
回すビスのサビ。
近所の金物屋さんを覗いたら有りました!M3でL15のステンレススクリュー!
ワイヤーブラシで研磨すればサビは取れるでしょうけど結構なトルクが掛かるビスでもあるので
ここは交換しておいた方が安心。どうせ交換するならサビ耐性の強いステンでしょう!

完成!
チューニングしたまま=弦テンションを掛けたまま2日ほど置いてからネックの変化を
確認、必要ならロッド調整して再セッティング。
勿論お客様引き取り当日もネックコンディションの変化をチェック。

日本製とは言えスクワイヤー。
スクワイヤーにここまで手を掛ける必要があるのか?と疑問に感じる方も居るかもしれない。
でも現状の日本製フェンダーの販売価格、ジャパンビンテージカテゴリーのフェンジャパの
相場を見て欲しい。
もはやフェンジャパに限らず「MADE IN JAPAN」のエレキギターは新品中古問わずに
簡単に買える値段ではない。これからも相場は上がっていくだろう。

長文お付き合い頂き有難う御座いました。
ジャパンビンテージレストアVOL2、2本目編は明日にでもアップ致します。
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YAMAHA HR-1 コレクターズコンディションをフルメンテナンス編
2022-01-11
大変遅くなりましたが明けましておめでとうございます。本年も当店を宜しくお願いします。
さて、新年1本目のブログ更新となりますが年末に作業させて頂いた
YAMAHA HR-1のご紹介。
数年前にHR-1を徹底的に作業させて頂きましたが同じお客様にリピート依頼を頂きました。
こんな貴重なギターをまたお預け頂くとは大変有り難い事です。
今回のHR-1なのですが、驚くほどの美品!目立つダメージが一切無い!!
それもそのはずでオーナー様はコレクターからお譲り頂いたそうで。
現存するHR-1の中では一番キレイなんじゃない?と言っても過言では無いかと思います。

塗装面にダメージが無い時点で十分素晴らしいのですが、ゴールドパーツの
コンディションもかなり良いです。

トレモロ周り等は一番手が当たる箇所なので茶サビが発生してメッキごと浮き上がっていたりと
酷い状態のロッキンマジックは良く見るのですが、多少色抜けしているもののサビが無いのは
本当に驚きです。

フロントPU横のコンプレッサー、ピエゾPU起動スイッチも正常に作動。
ブラスエスカッションの下にスイッチ類と一体型のABS樹脂?っぽい素材が
敷かれていますがその一部が縮んで浮き上がってはいます。
無理に修正してパキッ!っと行ったら大変なので薄い強力両面テープで浮き上がりを
何とか沈めようとしましたが糊代幅が1ミリ程度なので無理でした。

ボディー側面のチューナーも問題無し。
チューナーの小さなスイッチにはホコリが詰まりやすいのですがココもキレイ。
大変良い状態で保管されていたのでしょう。

指板サイドのLEDも全点灯。
近年は高輝度LEDが当たり前になり、指板に高輝度LEDが埋め込まれている物も
珍しくはなくなってきましたが高輝度だと抵抗上げて照度を下げても光方が鋭いので
本当に暗い状況下では光がボヤけて正確なポジション確認がしにくいなんて話も聞きました。
サイドポジは高輝度ではないLEDの方が向いているかと思います。
高輝度ではない従来型LEDは電気街でも売っているのをあまり見なくなってきましたが。

さて、巨大なコントロールパネルを明けてみます。
こちらもホコリやゴミの侵入が少なく、大きなトラブルは無い模様。

純正の単3x6本の電池ボックスは既に9V角形仕様に変更されています。
バッテリースナップもクリフなのでバッチリなのですが、電池の固定方法が
ちょっと残念。おそらくメラミンスポンジが詰め込まれております。
電池固定方法は手を入れたいかと。

トレモロのサスティーンブロック角に青白い粉吹きが見られます。
深くまで浸食してなければ良いのですが、これはトレモロ外してクリーニングします。

トレモロスプリングも伸びているので交換します。
毎度の事ながらブリッジアース線のハンダ付けが気に入らないのでハンガーごと
変えてしまおうかと。確かこの頃は現行GOTOHのハンガーと互換性があったはずなので。

トレモロ外してみました。
やはりちょっと酸化して粉吹いてますね。

ピエゾPUの基板を外したら固定ビス穴も少し怪しい。

まずはサスティーンブロックの問題箇所を柔らかめのワイヤーブラシで研磨。
粉吹きを落とします。メッキも落ちているので対策を施します。

剥がれ落ちたメッキを部分的に補修するのは無理なので、現状維持、再度の粉吹き防止対策として
粘度の高いリチウム系グリスを薄塗りして金属表面を保護します。

ピエゾのビス穴周辺も同様に。

ビス穴自体には爪楊枝でグリスを塗布。

トレモロ部のメンテナンス完了。

今度はネック側を着工。
6弦側のローフレット付近が逆反りの少し捻れぎみでhがあるものの、音詰まりが出るほど
酷い訳では無い。お客様に今後の使用頻度を尋ねるとコンディションチェックでたまに弾く
ぐらいとの事なので今回はフレットのすり合わせで様子を見る事に。
ペグ、ロックナット、テンションバーも外して1個づつ清掃。

さあ問題のバッテリー収納部だ。

底面にウレタンが貼られているが既に硬化してカッチカチ。

9V電池用のバッテリーホルダーを使って固定する事にします。

ホルダーはビス止めでしっかりとした固定が可能。

ただ…ボディー厚が45ミリ、ウレタン込みでザグリの深さが32ミリ、ウレタン剥がして
36ミリ。45ー36=9ミリ。長いビスは使えない。

このホルダーを使う時によく使うビスを入れてみると突き出し量は6ミリ。
ちょっと危険なので、

食い切りで先端を2ミリほどカット。

ホルダー取付け完了!!

電池固定もバッチリ!

ジャックはモールドタイプでした。まだ使えると言えば使えますが流石にガリが出ていたので
交換。
プラグイン時のスイッチノイズ対策なのかセラミックコンデンサーの103がホットとアース間に
仕込まれています。

ハイパス用の102なら在庫していますが流石に103は持っていないので流用する事に。
ジャックは安定安心のスイッチクラフト12Bです。

取付けたらこんな感じ。
プラグを差してもどこにも干渉していないので問題ありません。

結局と言うか予定通りと言うかトレモロスプリング、ハンガー、ハンガービス全て交換。
ブリッジアースは画像では見えていませんが、いつも通りスプリングに干渉しない様に
ザグリ側面底をはわせております。

ちなみにロッキンマジック期のヤマハ、トレモロスプリングはポン付け交換では
済みません。
画像上が純正、下がGOTOH。サスティーンブロックに引っ掛ける足を曲げないと
簡単に外れてしまいます。

ようやく最終調整を残すのみとなりましたが、電池収納部の蓋の固定ビスが気に入らない(笑)
バックパネルのビスを全て新調したから余計に気になる。
画像では銀色に見えますが実際は黒のメッキが剥がれてあまりキレイではない。
コインやマイナスドライバーで脱着可能なのは便利かもしれないがサスティナーでもないので
頻繁に電池交換する事は必要ない。

なので同じビス径、ほぼ同じ長さののプラスねじ黒を買ってきました。
もちろん純正ビスはお客様へお返しします。

完成!

前に作業したHR-1をブログアップした時に
こんな綺麗なHR-1はもう見る事ないだろう的な事を書いた記憶がありますが、上書きです。
今回のHR-1以上のコンディションの物を触る機会は無いでしょう! たぶん(笑)

冒頭にも書きましたが本年も当店を宜しくお願いします。
またコロナが拡大しつつあるので、もう少しは我慢の日々が続きそうですが
今年の後半ぐらいには元の暮らしに戻れたら良いかな?なんて思ってます。
今年こそ皆様の音楽活動が再開出来る様になれば良いですね。
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【年末年始休業のご案内】
2021-12-28
遅くなりましたが年末年始の営業・休業は下記になります。年内営業 本日28日15時頃まで
年始営業 7日(金)より通常営業
本年も当店をご利用頂き有難う御座いました。
コロナ禍の最中、皆様のご来店、通販リペアの作業依頼、心より感謝しております。本当に有難う御座いました。
変異株の感染拡大が気にはなりますが来年も当店を宜しくお願い致します。
皆様良いお年をお迎え下さい。
来年こそ普通の生活が戻る事を願って。

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ピックアップの線材を根元から引き直す編
2021-12-04
告知などではないブログアップは久し振りになります。有り難い事に作業は忙しくさせて頂いておりますが、フルレストア作業が多く、それも今まで
ブログに書いた内容と同じ様な作業ばかりで一言で言えばネタ切れでした。
今回はピックアップのワイヤリングを根元から引き直す作業をご紹介。
ヴィンテージのみならず作業をお受けする機会が増えてきたのがオールドダンカンやギブソン系の
ピックアップ。
線材の短い事の多い中古ピックアップですが、単に線材を継ぎ足して延長するとその箇所が
ボディーのワイヤーホールに引っ掛かって通せなかったり他の線材の邪魔になったりと
出来れば新品と同じく配線の引き回しをしたいところ。
また継ぎ足し部のハンダ作業で微弱ながらも電気信号の減衰はあるでしょう。
何よりも精神衛生上、継ぎ足し無しでピックアップ本来の信号を出力したいですよね。

今回は複数個まとめてご依頼頂きました。

まずは作業前に抵抗値計測。
ご依頼頂いたお客様は常連様で中古ピックアップにも精通しているので抵抗値チェック済みでは
あろうけど一応念の為。

早速分解に入ります。
ピックアップ外周のアセテートテープを剥がし、裏面のボビン固定ビス4本を外します。
大体の洋モノPUはこのビスがブラス=真鍮なのでビス素材として柔らかい。
+やーのビス穴にロウ浸けのパラフィンが残っている場合はきっちり除去しないと
ドライバーの掛かりが浅く、無理に緩めようとすると差し穴をナメてしまうので要注意。
パラフィンで差し穴が埋まっている場合は爪楊枝等で綺麗に除去して下さい。
またサイズが合ったドライバーを使用する事も重要です。

次にアジャスタブルポールピースがシャーシーから完全に抜けるまで緩め、
シャーシーとのアース線を外します。

ダンカンのトレムバッカーはボビン外周の銅箔テープにもアース線が繋がっているので
作業時は取り扱い注意です。

ダブルアジャスタブルポールピースのピックアップは全てのポールピースを
緩める必要があります。
ディマジオでは六角穴のダブルアジャスタブルポールピースのモデルが多いですが、
ポールピースを緩める際にはインチサイズのレンチが必要です。

分解完了。
ボビン固定ビスやボビン下のスペーサーをなくさない様に。

交換する線材はモントルーが販売している4芯シールド線。
1mの切り売りで便利なのですが、耐熱線材でないのが残念。
とは言えダンカン等も純正の線材は耐熱ではないので仕方ないのかも。
配線作業時はハンダを当てる時間を可能な限り短く済ませる技術が求められる。

さて、本格的に線材交換に入ります。

ダンカン純正もモントルーの線材も色は白黒緑赤。
各線材の接続先は様々ですが大体のピックアップメーカーはこの4色なので
ユニバーサル規格の4色と言っても良いかもしれませんね。
ちなみに少し古い国産系ピックアップだと茶黒赤オレンジなど様々です。

ボビン(コイル)と繋がった線材と出力線の絶縁フイルムを剥がし、新しい線材の同色と
ハンダ付け。そしてΦ1ミリの収縮チューブを使用して絶縁。
先端はプライヤーで平たく潰して完全に密閉します。

実はこの作業こそが線材入れ替えで一番神経を使いますが、ボビン側=コイル側からの
白/黒の線はコイルに直結しているので強く引っ張る事は出来ません。
元の絶縁フイルムを剥がす際や線材の被膜を剥き直す際は線材をしっかり固定して
コイル側を絶対に引っ張らない様に注意が必要です。
仮にコイルと線材の接合部が断線したとしたら、コイルの巻き終わりなら繋ぎ直せますが
巻き始めだとどうにもなりませんので。

裸線=アース線をシャーシーの元々のアース接続部へハンダ付け。

シャーシーのワイヤーホールへ線材を通す。

ボビン固定ビスを軽く締め込んで仮組み。

各線材の収納スペース、収納方法を考えながら、

線材先端部を剥いてから改めて抵抗値チェック。
実は画像はありませんが各作業段階終了ごとに抵抗値チェックしています。

アジャスタブルポールピースも締め込んで本組み上げ。
元のロウ浸けパラフィンやボビンテープのベタ付きで黒い粘着性の汚れが
ボビントップや手袋にベッタベタに付いていますが、

ステッカー剥がしで一掃出来ます。

キッチンペーパーや厚手のティッシュにステッカー剥がしを吹き出して
軽く拭き取ればスッキリ!

主作業のラストは外周にアセテートテープを巻きます。

1周ちょっとだけ巻きますが、巻き終わりの部分には粘度の高い瞬間接着剤を
一滴=米粒より少し小さいぐらい垂らします。
これは後のロウ浸け=ポッティング時の熱でアセテートテープが剥がれるのを
防ぐ為です。

最後にもう一度抵抗値チェック。

完成。
この線材の長さなら大抵のギターなら問題無いはず。
作業受付時にフロントなのかリアなのか、どんなギターにマウント予定かを
お聞きして完成時の線材の長さを打ち合わせしております。

ロウ浸け=ポッティング。
エンジニアによって浸ける時間は様々ですが自分はシャーシー裏面のロウが完全に溶けて
鍋の上からシャーシーがクリアーになれば引き上げてます。
時間で言えばタバコ1本をゆっくり吸い終わるぐらいでしょうか。

鍋から引き上げたらしばらくはシャーシーを上側=ひっくり返した状態で冷ましますが
少し熱いながらも素手で持てる程度に冷ましたら先にアジャスタブルポールピースの
ネジ溝に入り込んだパラフィンを爪楊枝で除去します。
完全に冷えてからだと綺麗に取りにくいので。

ボビン表面に残ったパラフィンはステッカー剥がしで除去します。
先に書いた時と同様、何かしたらのペーパーに一吹きしてからボビンに擦り傷を入れない様に
優しく拭き取ります。

完全にパラフィンが固まったら最後の抵抗値チェック。

全て完成!
さすがに個数が多くなるとそれなりに作業時間が掛かりますな。

今回の様な作業は1個6000円~7000円でお受けしております。
分解出来るピックアップのみ対応で、アクティブやピックアップカバー内にエポキシ樹脂で
ピックアップ本体が固定されている物は作業不可能です。
1芯モデルをタップ配線等可能な4芯化も工賃追加になりますが作業可能です。
近年はネット通販で並行輸入のダンカン等はかなり安いので基本的にはオールドダンカンや
ビンテージなどにお勧めのメニューになります。
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臨時休業のお知らせ
2021-11-22
23日(祝)祝日定休。24日(水)は臨時休業とさせて頂きます。
25日(木)以降は通常営業です。
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インド三部作コンセプトでランダムスターを組み上げる編
2021-10-09
最近ブログ更新が滞りがちで申し訳ありません。作業を止めてブログを書く時間が中々取れなくて。
お盆の頃から9月は雨続きだったりと湿度が高くてネック周りの作業が大幅に遅延しております。
作業をご依頼頂いているお客様には今しばらくお時間を頂戴戴ければ幸いです。
さて、今回は王道ギターの作業依頼を頂きました。
ESPロゴは入っておりませんので廉価版?だと思われますがランダムスターのローズ指板仕様です。
ミラーピックガードは別にお預かりしましたが、トレモロ欠品を含めほぼドンガラ状態。
ピックアップはお客様お持ち込みですがペグは新調、トレモロも新たに手配で徹底的に作業します。
お客様がインド三部作期リスペクトなのでアーニー11~48で一音下げでのセットアップです。

今も続いているフロイドローズ関係の供給不足でトレモロの手配は苦労しました。
物的にフロイドローズを付けたいのですが納期が全く不明…
唯一手配出来たのがシャーラーのロックマイスターでした。
本当に早く元の供給状態に戻って欲しいです。

まずはフレットから着工。
ネックには問題となるクセが見られなかったので指板修正は天候面以外は順調に進行。
使用フレットはJESCAR #55090。

雨続きの合間を縫ってフレット周りの作業は予定がかなり遅れるも何とか完了。

今回のランダムスター然り指板側面のカラー塗装が指板角ギリギリまで来てると
フレット端の処理が大変。いつも通りの手法では塗装が剥げてしまうので。
大雑把に余剰フレットを削ってからは目の細かいヤスリで慎重且つ丁寧に1本1本仕上げる感じ。

今度はボディー側です。
お客様お持ち込みのピックアップがとレムバッカーなので、

まずはエスカッション取付け穴の変更から作業します。
ちなみに廉価版?とは言え、きっちり作り込まれているのでビス穴もボディーに対して
垂直に開けられているし各部の精度も高いです。
このエスカッションビス穴を含めミラーピックガードのビス穴も全て一度埋め木して空け直しましたが
埋め木の為のビス穴拡大でボール盤でビットを落とす時に余計な手応えが無い。
普段こんな感覚はあまり味わえません。

トグルスイッチはオープンタイプから耐久性重視でミニトグルへ変更なのです。

が、ミニトグルの取付けナット下のワッシャーを落とし込むにはトグルスイッチ穴と
ピックガード穴のセンターずれが問題に。
手作業でピックガード、ボディー側の穴を調整加工して、

ミニトグル取付け完了。
スイッチの動作方向は純正と同じ。

お次はノイズ対策です。
導電塗料塗って有線で各ザグリを結ぶ。

コントロールザグリの落とし込み部はビス穴周辺の一部のみ導電塗料を塗ってパネル裏の
導通シートとの接触を確保します。

電気系の組み上げ完了。

ちなみに純正のコントロール、トグルスイッチのパネルは経年のパネル変形の為か落とし込みにパネルが
きっちり収まる方向が決まってしまっていたので、分解時にはパネルのネック側へマーキングしておき、

パネル裏面の導通シートを貼ってから、

取付け方向を記しておきました。
頻繁に開ける場所ではありませんが念の為。

シャーラーロックマイスターを別途手配した木ネジスタッドでマウントして完成!
ペグ、ロックナット、トレモロ、ビス類、全ての金属パーツが新品なので綺麗に仕上がりました。

こちらは同じお客様からお預かりした初期型プライム。
フレットすり合わせ、スイッチをミニトグル化、ポット、ジャック交換、
エスカッションを白のLP用プラスチック製の物を加工して取付けなど
ディープなフルメンテナンスを作業させて頂きました。
セッティングは勿論一音下げです。


完成時に並べて記念撮影。
往年の思い出に浸っていると、

別のお客様より別のプライムの作業をご依頼頂きました(笑) 有り難い事です。
何故か今年は同じギターの作業依頼が続きます。
N4なんかは例年の3倍ぐらいの本数をご依頼頂きました。
作業のご依頼が続くのは本当に有り難く、お客様皆様に感謝しておりますが
コロナはもう続いて欲しくないですね。
どうか第6波は来ずにこのまま終息します様に。

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